研究課題/領域番号 |
24591547
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
豊田 秀実 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60525327)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | oncolytic virotherapy |
研究概要 |
神経芽腫は小児固形腫瘍で最も多い悪性腫瘍で、1歳以降に発症する場合は外科的治療・化学療法・放射線療法を使用した集学的治療を行っても予後は非常に不良であり、新しい治療法の開発が強く望まれています。一方、ポリオウイルス(以下PV)は小児麻痺の原因ウイルスで、ポリオウイルスレセプター (以下CD155)を介して脊髄の前角細胞に感染し、アポトーシスを誘導することにより運動神経麻痺を発症します。こうしたPVの神経細胞に対する親和性に着目し、申請者らはPVを神経芽腫の治療に応用しようと試みてきました。これまで申請者らは、マウスを用いた研究でPVは神経芽腫細胞に対して強い抗腫瘍活性を持ち、マウスに移植した腫瘍が消失する事を報告してきました。さらに驚いたことに神経芽腫をPVで治療することで抗腫瘍免疫が誘導されることが示唆されました。今回我々は抗腫瘍免疫獲得の機序の解明を目指しました。 まず、CD155が抗腫瘍免疫の標的分子か否かの検討を行うため、PVの中和抗体を獲得後に右側腹部に1x107のNeuro-2aCD155細胞を皮下移植し、7-12日後に150mm3の腫瘤を形成した時点でSabin1の腫瘍内投与を1週間毎日行いました。その後180日間腫瘍サイズをモニターし、腫瘍再発を認めないマウスの左側腹部に1x107のNeuro-2aCD155細胞を移植した後2ヶ月間腫瘤形成の有無を経過観察しました。90%のマウスが180日間の経過観察中に再発を認めず、1st tumor-rechallengeの後に腫瘤形成したマウスは一例も認めませんでした。腫瘍再発を認めないマウスの腹部に1x107のNeuro-2a細胞を移植(2nd tumor-rechallenge)したが、すべてのマウスで腫瘤形成は認められず、CD155が抗腫瘍免疫の標的分子になっていないことが明らかになりました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで予定通り順調に研究を施行し、仮説通りの結果が得られているため、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.臨床応用可能な、より安全な弱毒PVの開発 2010年から三重大学医学部附属病院で開始した第1相の臨床試験では、再発神経芽腫の患者さんに対し、ポリオウイルスのワクチン株であるSabin 1の腫瘍内投与を行い治療しました。神経芽腫患者さんに対するSabin 1での治療による、有害事象は認められておりませんが、腫瘍細胞内で増殖を繰り返すことによって強毒化する可能性もあり、臨床応用可能な安全な弱毒PVの開発を行います。そこでまず、ヒト神経芽腫細胞を用いて、Sabin 1を継体培養します。その過程で、神経芽腫の細胞株が強い細胞変性効果(cytopathic effect; CPE)を示した時点で、培養上清からPV-RNAを抽出しRT-PCRを行い、塩基配列を決定します。更に、CD155トランスジェニックマウスを用いて、変異ウイルスの毒性を評価します。 2. PV感染により細胞死した神経芽腫細胞をワクチンとした抗腫瘍免疫の誘導 今までの申請者らの実験結果から、神経芽腫をPVで治療することにより抗腫瘍免疫が誘導されることが示唆されています。抗腫瘍免疫誘導に関わる抗原を同定する第一段階として、PV感染で細胞死した神経芽腫細胞には抗腫瘍免疫誘導能があるか否かを検討する必要があります。そのため申請者はPV感染で細胞死した神経芽腫細胞でCD155tgA/Jマウスをワクチンした後、このマウスにN2aCD155 細胞を移植し腫瘍増殖抑制効果があるか否かを検討します。
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次年度の研究費の使用計画 |
神経芽腫細胞株の培養用に、フラスコ、培養液を購入します。また、PCR、Western Blottingに必要な物品を購入いたします。
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