研究課題
急性骨髄性白血病(AML)は、臨床像および遺伝的背景も非常にheterogenousで予後不良な疾患である。我々は、11p15転座を有するAMLにおいてNUP98遺伝子が関与して、それらが正常造血に必須の転写因子であるHOX遺伝子と融合することを見出した。また、NUP98-HOX融合遺伝子を有したAMLに高頻度に認められる遺伝子異常(FLT3遺伝子internal tandem duplication(FLT3-ITD)、NRAS遺伝子変異(NRAS-MT)、WT1遺伝子変異(WT1-MT))を同定し、予後との関連を明らかにした。今回、NUP98-HOX融合遺伝子と協調する遺伝子変異との白血病化の機序を検討した。方法: NUP98-HOXA9遺伝子(NHA9)、FLT3-ITD、NRAS-MT、WT1-MTをそれぞれ導入したIL3依存32D細胞株を用いて、またNHA9とFLT3-ITD、NRAS-MTおよびWT1-MTを同時に32D細胞株(NHA9/FLT3-ITD、NHA9/ NRAS-MT、NHA9/ WT1-MT)を用いて、細胞増殖能、分化能、アポトーシス能および自己複製能を調べた。結果:増殖能に関して、IL3未添加でもそれぞれの遺伝子導入した細胞は増殖したが、特にNHA9/FLT3-ITD、NHA9/ NRAS-MT、NHA9/ WT1-MTおよびFLT3-ITDが高い増殖能を示した。G-CSF添加後の分化能を検討したところ、遺伝子を導入したすべての細胞ではCD11bとGr1の発現が低下しており、また、形態学的にも分葉核が減少した。アポトーシスに関して、それぞれの遺伝子を導入した細胞ではAnnexin Vの発現が低下した。さらに、自己複製能を検討したところ、NRAS-MT 以外の遺伝子を導入した細胞ではコロニー形成が増加した。考察:今回のin vitroの解析では、NUP98-HOX融合遺伝子を有するAMLは、他の遺伝子変異と協調して、増殖能亢進、分化障害、アポトーシス抑制および自己複製能亢進により白血病化に寄与していることが明らかとなった。今後、in vivoでの検証を行うことで、治療法を検討する予定である。
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