研究課題/領域番号 |
24591553
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
浜崎 雄平 佐賀大学, 医学部, 教授 (10172967)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 気道上皮 / ケラチナサイト / IL-33 / TNFa / サイトカイン / アラキドン酸 |
研究概要 |
乳幼児喘息の増加の要因として考えられる免疫系Th1/Th2環境がTh2優位環境へシフトする機序を,環境要因と気道上皮の相互作用の観点から,気道培養細胞と動物モデルを用いて明らかにするために培養気道上皮および,ケラチナサイトを用いた実験系を確立した.これらの培養細胞より産生される種々の活性物質,およびToll-like receptorや接着因子等の細胞表面分子発現が,抗原暴露やウイルス感染,および喫煙等の環境要因により受ける影響を暴露の強度と時期の観点から検討し,更に,その制御が脂質系調節因子であるアラキドン酸代謝系物質によりいかなる2次的調節を受けているかを生化学的,分子生物学的手法を用いて解析を進めている. 気道上皮はサイトカイン,ケモカイン,アラキドン酸代謝物に対する受容体を発現し,これらの活性物質からのシグナルを通して,RANTES・Eotaxin・IL-8等のケモカイン,PGE2・15HETEなどのアラキドン酸代謝物,IL-1β・IL-11・G-CSFなどのサイトカインを産生する.また, ICAM-1等の接着因子,Tall like receptor(TLR-2,3,8,9など) を発現し,ウイルス等の病原体に反応してインターフェロンを産生し感染防御に働くと共に自然免疫担当細胞としても作用する.今年度は上皮細胞の機能を活性物質(アラキドン酸代謝物およびサイトカイン),傷害因子とのクロストークの観点から検討するため,気道上皮細胞と皮膚ケラチナサイトを種々の条件下で培養し,細胞表面のTSLP,アラキドン酸代謝系酵素,サイトカイン/ケモカインのmRNA発現,蛋白発現等を検討した. その結果,ケラチナサイトがIL-33を産生することを確認し,その産生がTNFa で誘導されることを見いだした
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ケラチナサイトおよび気道上皮細胞の培養については確立ができた.IL-33は種々の外的刺激により上皮細胞から産生され,リンパ球に作用して,Th2サイトカインであるIL-5, IL-4, IL-13等の産生を刺激することが報告されているため,アレルギー疾患の発現に関してきわめて重要な活性物質であることが推測されている. 今回,気道上皮ではないが,同じ,アレルギー性炎症が関与していると考えられるアトピ-性皮膚炎のターゲット細胞であるケラチナサイトに対して種々の活性物質の作用を検討し,その中から,TNFa,が強い誘導作用をもつことを発見した.この研究手法を用いて,培養細胞については更に研究を推し進める予定である. 実験動物を用いた系は,今年度は十分な進展が得られなかった.来年度に向けて継続して研究を進める.
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今後の研究の推進方策 |
①上皮細胞として気道上皮とケラチナサイトを用い,現在のテーマであるTh2シフトの機構に種々の内因性,外因性活性物質,抗原やウイルス感染,および喫煙等の環境因子がどのように関与しているかをアラキドン酸代謝物との関係で更に追求する ②気道上皮とケラチナサイトに発現しているアラキドン酸代謝物の受容体種類と発現の程度をmRNAと蛋白レベルで確認し,次いでそれらの発現が内因性,外因性活性物質によりいかなる影響を受けているかを検討し,さらには影響を受けた状況で外因性刺激とアラキドン酸代謝物がTSLP, IL-25, IL-33の産生をどのように制御しているかを明らかにする. ③TSLP, IL-25, IL-33はTH2サイトカイン産生リンパ球に作用してIL-5, IL-4, IL-13の産生を刺激することが明らかになっているのでその系に対するアラキドン酸代謝物の調節作用を明らかにできると考える. ④実験動物の系を確立して,同じコンセプトに沿って生化学的,分子生物学的手法を用いてwhole animal で同様の制御機構が存在することを証明する.
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次年度の研究費の使用計画 |
①細胞培養に必要な消耗品の購入 ②各種サイトカインのEIA測定キットの購入 ③実験動物の購入 ④サイトカインやアラキドン酸代謝物をはじめとする薬品の購入 ⑤情報の収集および成果の報告のために必要な学会参加のための交通費
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