研究課題/領域番号 |
24591553
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
浜崎 雄平 佐賀大学, 医学部, 教授 (10172967)
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キーワード | 気道上皮 / TRPV1 / INFr / TNFa / IL-33 / ケラチナサイト |
研究概要 |
乳幼児喘息の増加の要因として考えられる免疫系環境がTh2優位環境へシフトする機序における気道上皮細胞の役割を,環境要因と気道上皮の相互作用の観点から明らかにするため気道培養細胞と動物モデルを用いて,ウイルス感染,化学物質および喫煙等による影響を暴露強度と時期の観点から検討している.更に,その制御が脂質系調節因子であるアラキドン酸代謝系物質によりいかなる2次的調節を受けているかを生化学的,分子生物学的手法を用いて解析を試みている.気道上皮は種々の活性物質を産生し,同時にToll-like receptorや接着因子,サイトカイン,ケモカイン,アラキドン酸代謝物に対する受容体を細胞表面に発現している.気道上皮はこれら活性物質からのシグナルを通して,RANTES・Eotaxin・IL-8等のケモカイン,PGE2・15HETEなどのアラキドン酸代謝物,IL-1β・IL-11・G-CSFなどのサイトカインを産生する.また, ICAM-1等の接着因子,Tall like receptor(TLR-2,3,8,9など) を発現し,ウイルス等の病原体に反応してインターフェロンを産生し感染防御に働くと共に自然免疫担当細胞としても作用する.最近,従来は神経細胞に発現して温度センサーとして機能していると考えられていたTRP(温度感受性受容体)が他の細胞にも発現することが報告されている.今回,我々は気道上皮細胞にTRPA1が発現していることを明らかにし,気道炎症の進展に関与している可能性を見出し,更にその意義について検討を続けている.また,昨年度,TNFaが炎症性サイトカインであるIL-33の皮膚上皮であるケラチナサイトからの産生増加を引き起こすことを報告したが,今年度は更にINFrが同様の作用を示すことを見出し報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験動物を用いた系は,今年度も十分な進展が得られなかった.来年度に向けて継続して研究を進める.一方で,細胞培養を用いた研究はある程度の結果を得ることができた. 昨年度確立したケラチナサイトおよび気道上皮細胞の培養系を用いて種々の検討をおこなった.IL-33は種々の外的刺激により上皮細胞から産生され,リンパ球に作用して,Th2サイトカインであるIL-5, IL-4, IL-13等の産生を刺激することが報告されているため,アレルギー疾患の発現に関してきわめて重要な活性物質である. 昨年,アレルギー性炎症が関与していると考えられるアトピ-性皮膚炎のターゲット細胞であるケラチナサイトに対してTNFa,が強い誘導作用をもつことを見出した.今年度はINFrが,ケラナサイトからのIL-33産生をmRNAおよび蛋白レベルで刺激することが明らかとなった.抗 IL-33抗体を用いてIL-33の作用を抑制することで炎症反応が有意に抑制されることが判明した.このことより‘IL-33および,TNFaやINFrをターゲットとした抗炎症治療法の開発が考えられる.TRPに関しては,気道上皮が恒常的にTRPA1を発現していることが明らかとなった.TRPA1のリガンドであるAITCはIL-6の産生を誘導し,Poly(IC)で細胞を前処理することにより,AITC によるIL-6の産生は更に増強することが判明した.その機序はPoly(IC)によるTRPA1の発現増強によると考えられる.実験動物を用いた系の研究が遅れている原因は,主に上記細胞培養系の研究を進めていることが一因である.
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今後の研究の推進方策 |
①上皮細胞として気道上皮とケラチナサイトを平行して用い,現在のテーマであるTh2シフトの機構に種々の内因性,外因性活性物質,抗原やウイルス感染,および喫煙等の環境因子がどのように関与しているかをアラキドン酸代謝物との関係で更に追求する ②更に,実験動物の系を確立して,同じコンセプトに沿って生化学的,分子生物学的手法を用いて研究を進める
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次年度の研究費の使用計画 |
報告の印刷費の必要経費として残していたが、必要な時期が26年度に繰り越しとなったため残額が生じた。 残額はわずかなので来年度の研究費に合算して使用する。
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