研究課題/領域番号 |
24591554
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
山本 修一 佐賀大学, 医学部, 講師 (30359947)
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研究分担者 |
谷口 一登 佐賀大学, 医学部, 助教 (20625347)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 気道上皮細胞 / 神経原性炎症 / Semaphorin |
研究概要 |
Semaphorinとは元来、神経軸索伸長を抑制する因子として発見され、その構造上の特徴から7つのclassに分類される大きなfamilyを形成する物質である。Semaphorinは神経軸索伸長に関わるだけでなく、心臓の発生、脈管の成長、腫瘍の進展、免疫系に及ぼす作用など生体に対するさまざまな重要な作用が判明している。しかしながら、気道におけるSemaphorinの産生や働きは全く知られていなかった。 そこで我々はまず、気道上皮細胞がSemaphorinのうち特に分泌型であるSema3Aを産生しているかどうかについて調べた。気道上皮細胞はSema3AのmRNAを恒常的に発現していた。Sema3Aタンパクは培養上清に発現していると思われたのでELISAにてその存在を確かめようと試みた。Sema3Aに対する抗体を組み合わせELISA開発を試みたが、なかなか良い抗体の組み合わせが見当たらず開発に難渋した。これに約8か月を費やしようやく実用的なELISAを開発し、気道上皮細胞からのSema3Aの産生を確認した。 次にSema3Aの産生を促す因子について検討した。人工的な2本鎖RNAであるpoly(IC)は濃度依存的にSema3AのmRNA発現およびタンパク産生を誘導した。poly(IC)はTLR3のagonistである。他のTLR agonisitsについても検討したが、Sema3Aを誘導できたのはTLR3 agonistのみであり、気道上皮細胞はTLR3の刺激によりSema3Aを産生すると結論した。 poly(IC)は同時に気道上皮細胞におけるウイルス感染症モデルとしてとらえることができる。そこで現在、気道のウイルス感染症で起こってくる、炎症細胞の遊走に着目し、Sema3Aの好中球郵送に対する影響を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画においてはSema3Aのみならず、他のクラスのSemaphorinの産生も検討することにしていたが、現時点では検討ができていない。RT-PCR法にてmRNA発現を検討する予定であり、これらのSemaphorinのprimerを準備している段階である。 研究計画においてはウイルス気道感染症患者における気道分泌物中のSemaphorinを検討することにしているが、これまでに3例の検体を収集した。今後も積極的な検体の収集の必要がある。 以上のことはELISAの開発に難渋したことが関係している。よってこれまでの達成度は「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように24年度の研究計画からすると研究遂行に若干の遅れが出ている。25年度はこれを取り戻すと同時に、もともとの25年度の研究計画を実行したい。現在までの研究結果はほぼ想定の範囲内であり、今後の研究計画を大きく変更する必要はないと考えている。特に、Sema3Aの炎症細胞に対する遊走の作用では、興味深い結果が得られつつあり、これをさらに深めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は25,683円と少額であり、25年度の研究費使用計画の変更は必要ないと考えている。
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