Semaphorinとは元来、神経軸索伸長を抑制する因子として発見され、その構造上の特徴から7つのクラスに分類される大きなfamilyを形成する物質である。Semaphorinは神経軸索伸張に関わるだけでなく心臓の発生、脈管の成長、腫瘍の進展、免疫系に及ぼす作用など生体に対するさまざまな重要な作用が判明している。しかしながら気道におけSemaphorinの産生や働きはまったく知られていなかった。 そこで我々はまず、気道上皮細胞がSemaphorinの内特に分泌方であるSema3Aを産生しているかどうかを調べた。気道上皮細胞はSema3AのmRNAを恒常的に発現していた。そこで次にSema3AのELISAを開発し培養液中のSema3A蛋白産生を検討し、少量の蛋白も産生されていることを確認した。Sema3A蛋白産生を促進する因子について検討したところ、人工的な2本鎖RNAであるpoly(IC)は濃度依存性にSema3Aの産生を誘導した。 poly(IC)は気道上皮細胞におけるウイルス感染症モデルとして捉えることができる。そこで気道へのウイルス感染症のときに産生されることが予想されたことから、気道におけるSema3Aの役割として、炎症細胞の遊走に関わるのではないかという仮説について検討を行った。Sema3Aの受容体であるNRP1とplexinA1は好中球や好酸球に発現していることから、ウイルス気道感染症で重要な働きをしている好中球に対するSema3Aの作用について検討した。Sema3Aの好中球に対する、①アポトーシス誘導、②遊走誘導、③貪食作用、④メディエーター産生誘導の各項目についてそれぞれ検討した。①アポトーシス誘導、②遊走誘導、④メディエーター産生誘導についてはSema3Aは有意な作用を示さなかったが、③貪食作用を増強することが分かった。 以上よりウイルス気道感染により気道上皮細胞から産生されるSema3Aは、気道に遊走してきた好中球の貪食能を増強することを通じき、気道炎症に深く関与していることが示唆された。
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