研究課題/領域番号 |
24591555
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
是松 聖悟 大分大学, 医学部, 教授 (60264347)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 川崎病 / MMP9 / TIMP1 / 顆粒球 / 血小板 |
研究概要 |
MMP9とTIMP1の熱反応性:川崎病の遷延性高熱と冠動脈瘤発生の基礎的機序の検討 川崎病は乳幼児期に全身性血管炎に起因する遷延性高熱を呈し、一部に冠動脈瘤を発症する。MMP9による動脈内弾性板融解が、その一時的原因と指摘されている。我々はMMP9が顆粒球に、その抑制因子TIMP1が血小板に、高濃度分布することを報告した。今回は、健常者より、顆粒球、血小板を分離精製して、各分画のMMP9とTIMP1の熱反応性の基礎データを検討した。健常成人2名を対象とした。末梢血をinformed consentのもと80ml採取後、血漿、顆粒球、リンパ球、血小板を分離精製し、triplicateとして、37、39、41℃下、0.5、1、2、4、12時間共培養した。 ELISA法にて、まずは4時間後にはMMP9蛋白が、次いで12時間後にはTIMP1蛋白が増加することが明らかとなった。また、顆粒球培養上清中MMP9蛋白は軽度減少、TIMP1は温度が高いほど蛋白量の増加がみられ、その比は有意に低下した。Western blotでは、95kDaのMMP9蛋白がみられたが、MMP9の活性をみるgelatin zymographyでは、95kDaよりも72kDaの成熟型MMP9蛋白の活性がみられ、さらに41℃培養下では130kDaの未熟型酵素蛋白の活性比の増大がみられた。TIMP1を高濃度含有する血小板培養液上清によるMMP9活性阻害実験では、有意なMMP9の活性阻害がみられ、37℃より、41℃血小板培養液上清のほうが、阻害している傾向があった。 高温処理により、MMP9酵素蛋白は低下、TIMP1は増加、その比は有意に低下した。高温処理は、TIMP1のMMP9活性阻害能を増加した。川崎病における冠動脈瘤の発生機序と、高熱に対する治療法の検討に寄与する、基礎データとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
川崎病患児におけるMMP9とTIMP1の動態を検討するための基礎データを取ることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
われわれが見出したMMP9、TIMP1の血球起源と熱反応性の検討を、川崎病患児でも検討し、当時に、従来の治療薬(ガンマグロブリン、アスピリン、ステロイド、ウリナスタチン)を共培養し、ELISA法、Western blot法、Gelatin zymographyを用いて、MMP9、TIMP1の未熟型、活性型の蛋白及び活性にいかなる治療効果を示すかを検討する。 (1)血球分離:患児および保護者の同意のもと採取した急性期川崎病患児の末梢血5mlから顆粒球、リンパ球/単球、血小板を単離。 (2)血球培養:顆粒球、リンパ球/単球、血小板を37、39℃、10%CO2下で、ガンマグロブリン、アスピリン、ステロイド、ウリナスタチンと共培養し、培養上清を採取。血球を37℃、30分攪拌し、超音波処理にて破砕した抽出液を採取。 (3)ELISA、Western blot、Gelatin zymography:human ELISA kit MMP9、TIMP1(第一ファインケミカル)、Bio-Rad protein assay (Bio-Rad社, USA)を用いて蛋白定量。sodium dodecyl sulfate(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動の後、Western blot法にてMMP9、TIMP1免疫染色を行い、各種薬剤の反応性を蛋白発現にて検討。0.8%gelatin添加ポリアクリルアミドゲルにて電気泳動し、酵素還元溶液にてover nightで培養し、MMP9酵素活性の変化を検討。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究において、平成25年度の1年間で予定できる症例数は20例。血漿、顆粒球、リンパ球、血小板と、各種治療薬を共培養して、その経過の推移を、ELISA、Western blot法、Gelatin zymographyにて測定し、さらに、MMP inhibitor kitを用いた酵素活性抑制実験を行うため、それぞれ、1,100千円を要します。
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