研究課題/領域番号 |
24591558
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
野上 恵嗣 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50326328)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 血液凝固 / 第VIII因子 / 活性化/不活化 / 活性型第VII因子 / 組織因子 / 第IX因子 / 炎症性因子 / 結合部位 |
研究概要 |
凝固第VIII因子(FVIII)は、欠乏では重篤出血(血友病A)を、増加では易血栓を惹起するため、FVIIIを中心とする凝固血栓形成や抑制機序の解明は、血友病Aの治療戦略や血栓形成病態に応じた抗血栓凝固療法の発展に寄与する。凝固形成過程は内因系/外因系/凝固抑制系/線溶系が同時に互いに絡み合い進行する。今回FVIII活性化/不活化機構におけるこれら複数系の役割の新知見を得た。①内因系(FVIII-トロンビン(FIIa)制御軸:血液凝固にはFIIaのFVIII活性化は必須である。この反応に極めて重要なFVIIIArg372開裂を制御するFIIa結合領域は不明であったが、酸性領域内アミノ酸残基340-350内に存在する可能性が示唆された。②外因系(FVIII-FVIIa/組織因子(TF)制御軸):FVIIaは凝固極初期相にFVIIIを活性化する。この反応に組織因子(TF)が必須であるが、TFがFVIIIに直接結合しVWFと競合阻害することによりFVIIaが極めて作用しやすくする可能性を示唆した。③FVIIIa-FIXa制御軸:FIXa結合領域にあるPro1809→Leuの新規変異FVIIIを有する軽症型血友病Aを同定した。この変異FVIIIはC2エピトープ同種抗体を出現させ、Pro1809はC2ドメインの抗原性を制御するとともに、C2内のFIXa結合領域との密接な関連性を示唆した。④炎症性因子(カセプシンGとプロテアーゼ3)はFVIIIをリン脂質非依存性に不活化するが、VWF存在下ではこの反応は抑制される生理的意義の一部を示した。⑤FVIIIインヒビター治療薬の活性型プロトロンビン複合体製剤(aPCC)はFVIIIを活性化することを初めて示した。そしてFVIII同種または自己抗体(インヒビター)存在下でもFVIII活性化が阻害されないこと、特に抗C2タイプ1では活性化効果がより持続しやすいことも示した。このことは新たな治療方針の展開をも示唆し得るものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は3つの課題、①FVIIaによる生理的なFVIII活性化機序、②FVIIaのFVIII結合部位の同定、③炎症系因子とFVIII活性化機序、を想定し、①と③は当初の目標は最低は達成できたが、①と③に時間がかかり、②は研究時間が十分でなく達成することができていない。しかし、TFとFVIIIの関連性やこの反応の生理的意義の一部を明らかにできた。また、軽症型血友病の変異FVIIIからFVIII-FIXa制御軸の一面も示すことができた。そして、aPCC製剤(FVIIa, FXa, FII, FIXa含有)によるFVIII活性化機序も初めて報告できた。このことは、内因系+外因系(複合因子)とFVIIIとの凝固制御機序をより明確にする事ができたと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
FVIIIの生体内止血血栓において、極めて重要な凝固因子であり、今回達成できた①と③についてはさらに発展させていき、また十分行えなかった②については、できるだけ早くに取り組んでいきたい。またその他の新たな知見に関しても、引き続き深く行っていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究費が生じたのは、上述したとおり当初の3つの課題のうち②が十分に進める事ができ得なかったためである。2つ(①と③)の関連からの結果および知見は多く得たが、②についての解明は次年度も積極的に引き続き行っていく予定であり、元来次年度の予定に挙げていた研究費に当該研究費を合わせて実験、研究を行っていく所存である。
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