研究課題/領域番号 |
24591558
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
野上 恵嗣 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50326328)
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キーワード | 血液凝固 / 第VIII因子 / 活性化/不活化 / 活性型第VII因子 / 組織因子 / 第IX因子 / 炎症性因子 / 結合部位 |
研究概要 |
凝固第VIII因子(FVIII)は、欠乏では重篤出血(血友病A)を、増加では易血栓を惹起するため、FVIIIを中心とする凝固血栓形成や抑制機序の解明は、血友病Aの治療戦略や血栓形成病態に応じた抗血栓凝固療法の発展に寄与する。凝固形成過程は内因系/外因系/凝固抑制系/線溶系が同時に互いに絡み合い進行する。今回FVIII活性化/不活化機構におけるこれら複数系の役割の新知見を得た。①内因系(FVIII-トロンビン(FIIa)制御軸:血液凝固にはFIIaのFVIII活性化は必須である。この反応に極めて重要なFVIIIArg372開裂を制御するFIIa結合領域は酸性領域内アミノ酸残基340-350内であり、さらに硫酸化Tyr346が重要に貢献していることが明らかになった。②外因系(FVIII-FVIIa/組織因子(TF)制御軸):FVIIaは凝固極初期相にFVIIIを活性化する。この反応に組織因子(TF)が必須であるが、FVIIa同様にTFもFVIIIに直接結合しVWFと競合阻害することによりFVIIaが極めて作用しやすくすること、またこのTFがFVIIIの軽鎖A3酸性領域が関与していることも明らかになった。③FVIIIa-FIXa制御軸:FIXa結合領域にあるPro1809→Leuの新規変異FVIIIを有する軽症型血友病AがFVIIIインヒビターを出現する機序を同定した。この変異FVIIIはC2エピトープ2248-2285残基認識抗体を出現させること、この変異のためVWFやリン脂質結合部位をdisturbすることも明らかになった。④炎症性因子(好中球プロテアーゼ3)はFVIIIをリン脂質非依存性に不活化するが、VWF存在下ではこの反応は抑制される生理的意義および、他の好中球プロテアーゼの働きと少し異なることもを示した。⑤FVIIIインヒビター治療薬のFVIIa/FX複合体(MC710)はFVIIIを活性化することを初めて示した。そしてFVIII同種または自己抗体(インヒビター)存在下でもFVIII活性化が阻害されないこと、特に抗C2タイプ1では活性化効果がより持続しやすいことも示した。このことは新たな治療方針の展開をも示唆し得るものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は3つの課題、①FIIaやFVIIaによる生理的なFVIII活性化機序、②FVIIaやTFのFVIII結合部位の同定、③炎症系因子とFVIII活性化機序、を想定し、①と③は当初の目標は順調に達成できており、②はアッセイ系の確立等に時間がかかっており、十分でなく達成することができていない。しかし、軽症型血友病の変異FVIIIからFVIII-FIXa制御軸の一面も示すことができた。そして、MC710製剤(FVIIa, FX含有)によるFVIII活性化機序も初めて報告できた。このことは、内因系+外因系(複合因子)とFVIIIとの凝固制御機序をより明確にする事ができたと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
FVIIIの生体内止血血栓において、極めて重要な凝固因子であり、今回達成できた①と③についてはさらに発展させていきたい。また十分行えなかった②については、できるだけspeedyに取り組んでいきたい。またその他の新たな知見に関しても、引き続き見つけていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究、実験に必要な物品(消耗品)費として使用していったが、その都度実験に必要な分だけ購入していったため、上記してある次年度使用額が生じた。さらに、当初の計画通りには、実験が進んでいない項目もあり、その分次年度使用額が生じた。 来年度も引き続き実験の遂行していくための物品(消耗品)費として使用する計画であり、上記されてある金額も同様に物品費として使用する予定である。
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