1. 被検血漿解析:患者34名から採血し、内訳は血栓性疾患群(A群)8名、出血性疾患群(B群)22名、その他4名であった。 (1)PC経路異常のスクリーニング検査:A群ではトロンビン生成能は正常であったがPC活性化刺激に対する感受性が有意に低下していた。半数(4例)でPC経路異常を示したが、うち3例はPC、PSおよびFV活性は正常で、FVIII活性高値が要因であった。一方B群ではPC経路機能は健常成人群と有意差を認めなかった。 (2)FVのAPC抵抗性試験:全患者中4例が異常値でAPC抵抗性FVの可能性を示したが、3例では抗FVIIIインヒビターの影響が疑われた。残り1例はA群の脳梗塞既往小児例であり、(1)の検査も異常値でFV活性低値を示した。FV分子異常症が疑われたが確定診断に至らず他疾患のため死亡された。FV低値を示したのはこの1例のみであり、この他にFVNara類似症例は認められなかった。B群の出血症状の重篤度と(1)、(2)の関連はなかった。 2.遺伝子組換えFVを用いたFVNara(FV-W1920R)の蛋白解析:遺伝子組換えFVとAPCの結合実験をELISAと表面プラズモン共鳴測定法を用いて実施し、FVとAPCの特異的結合を確認できたが、FV-wild typeに比したFV-W1920RのAPC結合能の有意差の有無の同定には至らなかった。 3. 総括と今後の展望: FVの抗凝固機能とその阻害(APC抵抗性)について、患者血漿および遺伝子組換えFVを用いて解析した。新たなAPC抵抗性FV症例は見出せなかったが、PC経路異常スクリーニング検査が本邦血栓性疾患においても有用であることが示唆された。近年、国内他施設からもFVNara類似症例が報告されており、本テーマの意義は大きい。より大規模なAPC抵抗性FVの関連調査が望まれる。
|