研究実績の概要 |
プロテオミクスを用いて冠動脈病変合併例および免疫グロブリン不応例の川崎病患者(KD)で、それぞれの病態に特異的な抗血管内皮細胞抗体(AECA)の対応抗原候補蛋白スポットを前者では17個、後者では32個検出した。病態に特異的なAECAが検出されたことから、これらが新規病態マーカーとなる可能性が考えられた。 抗Peroxiredoxin2(Prx2)抗体はKDで検出されたAECAの1つで、今回Prx2蛋白の血管内皮細胞(ECs)上における主なレセプターがToll-like receptor 4であることを明らかにした。ECsにおける炎症性サイトカインの産生や接着分子の発現が抗Prx2抗体単独刺激に比べ、Prx2蛋白との共存下で増強した。Prx2蛋白のみをECsに添加すると、IL-6, IL-8, GM-CSFおよびTNF-αなどの炎症性サイトカインの産生が誘導され、その作用は抗Prx2抗体より強い傾向が示された。IL-6およびIL-8産生ではPrx2蛋白の添加濃度に依存して、またGM-CSFおよびTNF-αではPrx2蛋白の添加濃度が高濃度でその産生が認められた。さらに変形性関節症患者からの軟骨細胞および滑膜細胞とECsでその産生量を比較したところ、IL-6では滑膜細胞とほぼ同様であったが、GM-CSFでは滑膜細胞および軟骨細胞に比べ増加傾向であった。またECsを炎症性サイトカインで刺激することで、Prx2蛋白が細胞培養上清中に検出された。ECsにPrx2蛋白を添加した場合、抗Prx2抗体刺激に比べECs上のE-selectinおよびI-CAM1の発現は高度であった。これらの結果から抗Prx2抗体は、血管障害に伴い産生される自己抗体と考えられた。抗Prx2抗体のみでなく、Prx2蛋白自身が血管内皮細胞傷害に関与している可能性が示唆され、今後更なる検討が必要であると考えられた。
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