【研究の目的】本研究は、研究代表者らが開発したコンピュータ骨髄性白血病幹細胞モデルを用いて抗がん剤抵抗性と再発のメカニズムを解明することを目的とした。 【研究実施計画】平成26年度は平成25年度の研究で明らかとなった問題点を克服し、まず、寛解維持型治療モデル(10年間無再発の治療モデル)のプロトタイプを構築することを目標とした。 【研究実績】1.白血病治療における寛解導入モデルの構築:平成25年度の研究では白血病幹細胞、前駆白血病細胞、および白血病細胞の細胞動態(cell kinetics) を正常造血の細胞動態と近似させることで、治療中は白血病細胞が骨髄中の5%未満になる「寛解導入モデル」が完成した。しかし、本モデルでは前駆白血病細胞および白血病細胞は消失するものの、白血病幹細胞が残存するために治療終了後早期に再発した。これは治療を強化しても解決できず、白血病造血を構築する細胞動態の根本的変革が必要と考えられた。 2. 白血病造血モデルの再検討:「がん細胞は増殖スピードが速いのではなく、増殖し続けることがその本質」である観察結果に基づき「正常幹細胞よりもはるかに細胞増殖の遅い白血病幹細胞システム」による白血病モデルを改めて構築した。その結果、正常細胞動態の3倍に延長した白血病細胞動態を用いた白血病モデルが確立した。 3. 寛解維持型治療モデルのプロトタイプの構築:白血病モデルに日本小児白血病治療プロトコールAML-05をモデル化した治療を導入し、寛解導入後10年間の無再発寛解維持モデルを構築した。 4. 上記モデルの白血病幹細胞の動態からは、治療期間中には白血病幹細胞は残存しうるが、正常造血が維持される過程で白血病幹細胞が消失していく現象が観察された。このことから、再発と寛解を分けるポイントが存在することを明らかにした。
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