研究実績の概要 |
小児のウイルス感染喘息の原因・誘因としては、我々や過去の報告からライノウイルスとRespiratory syncytial (RS) ウイルスが重要であると考えられる。本研究では、ウイルス感染気道上皮を用いて、特に好酸球性炎症の役割について検討することを目的とした。 最終年度の平成26年度は、RSウイルス感染および好酸球性顆粒蛋白による気道上皮傷害とサイトカイン産生における詳細な機序解明のために、さらに、ヒト正常気道上皮細胞におけるRSウイルスの感染と好酸球性顆粒蛋白のうち最も傷害性が強いことが証明されたMBPを用いて、気道上皮細胞の細胞内シグナル伝達機構の解析を行った。すなわち、8種類のリン酸化蛋白質 (ATF-2, Erk1/2, IkB-, p38MAPK, JNK, STAT3, AKT, GSK-3a/b) をBio-Plexによるmicrobeads assay (Bio-Rad) により網羅的に測定した。その結果、MBPにより、RSウイルス感染A549におけるErk1/2, p38MAPK, JNKなどのリン酸化が有意に上昇した。以上より、好酸球性顆粒蛋白、特にMBPは、RSウイルス感染気道上皮の傷害を引き起こすと考えられ、そのメカニズムには、MAPK familyが関与している可能性が示唆された。 なお、ライノウイルスについては、国内で実験を行っている数少ない施設である東北大学に依頼したが、種々の条件により共同研究には至らなかった。今後、ライノウイルスの感染実験については、他の施設との共同研究を含めて、今後の課題としたい。
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