研究課題/領域番号 |
24591566
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
李 元元 千葉県がんセンター(研究所), がん先進治療開発研究室, 研究員 (00392259)
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研究分担者 |
中川原 章 千葉県がんセンター(研究所), 研究局, センター長 (50117181)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 細胞死 / 依存性受容体 / 神経芽腫 |
研究概要 |
デス受容体を介した細胞死シグナル伝達経路の活性化におけるUNC5Dの機能的役割を解明することを目的として、本年度の研究では、まず、デス受容体のリガンドであるTumor necrosis factor(TNF)αおよびTumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL)によるデス受容体の活性化した場合でのUNC5Dの発現を調べた。その結果、TNF又はTRAILの処理はHeLa細胞および神経芽腫細胞株SH-SY5Yにおいて細胞死が起こったことが観察された。それに伴い、UNC5Dが誘導された。さらに、siRNAによりUNC5Dをknockdownする際に、TNFαの添加にて引き起こした細胞死が弱くなることもFACS解析で判った。従って、これらの結果はUNC5Dがデス受容体を介した細胞死シグナル伝達経路に関与することが示唆された。次に、UNC5Dがcaspase8のcleavage targetであるか否かを検討した。そのため、アミノ酸配列解析により見出した幾つかのcasepase8切断候補サイトに変異を導入して非切断型変異体発現ベクターを作製し、in vitro caspase 8 cleavage assayを行った。その結果、UNC5Dアミノ酸配列の二箇所はcaspase 8の認識サイトであることが判明した。さらに、その中の一箇所はcaspase3にも切断できることが判った。このサイトはUNC5Dの細胞外ドメインに局在していることで、活性化したcaspase3又はcaspase 8により切断されたUNC5D断片は細胞膜に局在することができるのが、リガンドのnetrin-1との結合ができなくなる。そこで、UNC5Dによる細胞内シグナルの伝達を細胞死誘導に導くこととなると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年の研究では、UNC5Dがデス受容体を介した細胞死シグナル伝達経路に関与することを明らかにした。さらに、UNC5Dはデス受容体シグナル伝達に不可欠な制御因子であるcaspase8のcleavage targetであることが判ったし、その切断サイトも判明した。従って、当初の研究計画通りに進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究ではデス受容体TNFRのリガンドであるTumor necrosis factor (TNF) αの処理に伴って、UNC5Dが誘導されることが見出された。これまでの我々の研究成果により、UNC5D はp53の転写標的遺伝子であることが判明したが、その発現上昇は野生型p53を持つ細胞と機能喪失型p53を持つ細胞の両方で認められることから、TNFα処理によるUNC5Dの誘導はp53非依存性であることが予測される。そこで、今後は、これまでの結果を踏まえ、UNC5D遺伝子promoter領域の配列を解析し、p53以外の転写制御因子の探索を行う。これによって、デス受容体を介した細胞死におけるUNC5Dの転写制御機構を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度では、前年度の結果を踏まえ、UNC5D遺伝子promoter領域の配列を解析し、転写因子のスクリーニングを行う。また、過剰発現およびsiRNAによるknockdownなどのアプローチを行い、TNFαやTRAILによる細胞死を誘導する際にUNC5Dの発現誘導の有無を検討することと、Luciferase reporter assay やChromatin immunoprecipitaion (ChIP) assayなどの方法を用いて、そのpromoterの結合領域を調べることによって、デス受容体シグナル活性化におけるUNC5Dの発現制御に関わる転写因子を決定し、その転写制御機構の詳細を解明する。これらの結果に基づいて、さらに、デス受容体を介して引き起こした細胞死におけるUNC5Dの機能的役割とその分子制御機構を深く探索する。
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