研究課題
基盤研究(C)
本研究は、小児AMLの遺伝子発現プロファイル解析から我々が新たに見出した予後不良因子N/N signature[NUP98/NSD1融合遺伝子(+)症例及び一部のNUP98/NSD1融合遺伝子(-)症例に見られる遺伝子発現プロファイル]の検査技術を開発し、リスク分類における有用性を検証するとともに、その予後不良の分子背景を明らかにすることを目的としたものであった。AML99研究130症例の遺伝子発現データを基にN/N signatureに関わる遺伝子を再検討する中で、N/N signatureと大部分重複するが、より特異度の高い予後不良予測のできるsignatureとしてEVI1、MEL1遺伝子の高発現を見出した。t(8;21)、inv(16)、t(15;17)、M7症例を除いた場合、EVI1/MEL1どちらかを高発現する症例の4年生存率が32%であるのに対し、両者がともに低発現である症例の4年生存率は95%であった。そこで、若干方向修正をし、これらの2遺伝子の発現を定量RT-PCRにより測定する予後予測法を開発した。N/N signatureの分子背景を解明する手がかりとして、NUP98/NSD1融合遺伝子(-)にも関わらずN/N signatureを示す15症例を対象として、次世代シークエンサーを用いたmRNAシークエンシング解析を行い、融合遺伝子の探索を行った。その結果、以前見落とされていたNUP98/NSD1融合遺伝子が1症例において、NUP98/HOXA13融合遺伝子が1症例において同定された他に、4症例において新規融合遺伝子候補が同定された。この結果から、NUP98融合遺伝子とN/N signatureとの強い相関が改めて示されるとともに、N/N signatureを示す要因にNUP98融合遺伝子以外の遺伝子異常も関わっていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度には、定量RT-PCRによるN/N signature検査法の確立、N/N signatureの予後不良との相関の検証、次世代シークエンサーを用いた新規融合遺伝子の探索を行う予定であった。しかし、上記のように若干の方向修正を行い、N/N signatureより優れた予後不良予測法としてEVI1/MEL1の定量RT-PCR検査法を開発した。AML05研究症例を用いたこの検査法の有効性の検証は、平成24年度中に行うことが出来なかったが、平成25年度前半には終えられる予定である。次世代シークエンサーを用いた新規融合遺伝子の探索に関しては、当初予定の3例を大きく上回る15例の解析を行い、新規融合遺伝子の同定にも成功した。総合的に判断して、おおむね順調に進展していると考える。
平成25年度には、EVI1/MEL1の定量RT-PCR検査による予後予測法の有効性の検証を、AML05研究症例を用いて行う。また、N/N signature (-)で、EVI1/MEL1遺伝子高発現の症例を対象として、次世代シークエンサーを用いた新規融合遺伝子の探索を引き続き行う。この解析及び平成24年度の解析から同定された新規融合遺伝子について、AML99研究症例、AML05研究症例を対象として検索を行い、その融合遺伝子の出現頻度、各サブタイプにおける分布、他の遺伝子異常との相関、予後との相関等を解析する。また、一部のものはクローニングを行い、その形質転換能、分化阻害能等を検討する。
比較的高価な次世代シークエンサーの試薬を購入するため、平成24年度の研究経費の一部を繰り越した。平成25年度の研究経費と併せて使用する予定である。
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Genes Chromosomes Cancer
巻: 52 ページ: 683-693
10.1002/gcc.22064