研究実績の概要 |
本研究は、AML99研究登録症例の遺伝子発現プロファイル解析から我々が見出した、小児AMLの予後不良因子NN signature(NUP98-NSD1融合陽性症例に特徴的な遺伝子発現プロファイル)の診断法を開発し、リスク分類における有用性を検証することを目的としていた。しかし、その後のデータ再解析から、NN signatureと重複し、より精度の高い予後不良因子としてEVI1遺伝子、MEL1遺伝子の高発現を同定し、その評価を行った。 AML99研究登録症例の解析から、①EVI1高発現とMEL1高発現は相互排他的であること、②巨核球系白血病を除き、EVI1/MEL1高発現症例は極めて予後不良であること(4-year EFS: 26%, 4-year OS: 32%; HR=5.63, P<0.00001 in EFS; HR=11.59, P<0.00001 in OS)、③既知主要予後因子FLT3-ITD変異、予後良好核型[t(8;21)、inv(16)、t(15;17)]との比較(多変量解析)においても有意な予後因子であること(HR=4.09, P=0.0020 in EFS; HR=16.82, P=0.00005 in OS)、④幹細胞移植治療を受けたEVI1/MEL1高発現症例の予後は比較的良好なこと[無再発率: 73% (8/11) vs 14% (2/14), P=0.0051; 生存率: 64% (7/11) vs 21% (3/14), P=0.049]等が、明らかになった。また、追加のAML-05研究登録症例を用いた解析においても、EVI1/MEL1高発現と予後不良の相関が再現されることを示した(4-year EFS: 12%, 4-year OS: 30%; HR=4.32, P<0.00001 in EFS; HR=5.21, P=0.00001 in OS)。以上の結果から、EVI1/MEL1高発現は小児AMLの層別化治療に非常に有用な予後因子となると考えられた。 EVI1/MEL1高発現症例の分子背景を検討した結果、EVI1高発現とMLL融合、MEL1高発現とNUP98-NSD1融合が強く相関することを見出した。一方、約半数では融合遺伝子が検出されなかったことから、EVI1/MEL1高発現には別の要因も関わっていることが示唆された。
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