研究課題
昨年度に引き続き、今年度もBCP-ALLモデル細胞を樹立することを目標とした。本研究では体細胞において実際の小児ALLに見られるIKZF1変異を導入することを目標としており、このモデル細胞の樹立が最も重要であり、また予測通り技術的に最も困難なステップであった。従来の組み替え効率の高い細胞を用いるだけではモデル細胞の作成は困難と判断し、Zinc Finger Nuclease(ZFN)を用いることとした。まず親株となるNalm-6細胞のexon7-8領域のSNPsをPCRおよびダイレクトシーケンシング法により同定し、多型のない部位にZFNの結合域を設定した。同部位に選択的に結合、DNA切断するZFNが完成したので、これを用いて体細胞ターゲティングをこれから行う予定である。またモデル細胞が作製出来た場合にIKZF1を確かに欠失しているかどうかを検証するためにIKZF1のWestern blottingを用いた検出系を確立中した。Nalm-6細胞で60kDaの野生型の内因性IKZF1は検出することに成功した。加えてIK-6等の内因性の変異型については、細胞株の種類依存性ではあるが、検出することに成功した。平行して全長(野生型)およびエクソン4-7欠損型(IK-6発現型)の2つのIKZF1を従来型の強制発現系(Plasmid Vector)を用いて作成し、野生型およびIK-6型発現プラスミドは完成し、Western blottingにて予測されたサイズに蛋白分子が発現することも確認した。これらの強制発現系の機能については、蛍光顕微鏡を用いて核の内外での局在を確認することができた。下流の標的遺伝子の発現の変化についてはRT-PCRを用いた実験系を樹立する予定である。
4: 遅れている
モデル細胞の作成が終了する予定であったが、いまだに完成していない。体細胞遺伝子ターゲティングの目標が実際の患者細胞で起こっているスプライシング異常を模倣することであり、高度な技術が要求されること、が遅れている最大の理由であると考えられる。しかし、これを理由に技術的に簡易な方向に研究計画を変更することはなるべく避けたいと考えている。なぜなら、実際に臨床医学の現場で役に立つ成果を出すためには実際に患者で起こっている病態を再現することが重要であると考えるからである。
完成したZinc Finger Nuclease(ZFN)発現プラスミドを用いて体細胞ターゲティングを行う。モデル細胞が作製出来た場合には、Western blottiongおよびRT-PCRを用いてまず目的どおりのIK-6型蛋白分子が発現しているかどうかを確認する。次いで機能実験を行う予定である。モデル細胞系を樹立することに成功すれば、現在白血病治療に臨床で使用されている薬剤の感受性試験を行い、IKZF1変異がもたらす遺伝子機能の変化が実際に薬剤感受性にぞのような影響を与えているかを解析していく予定である。
試薬の一部をプロトコールを改善する等の工夫により少ない量で実験を遂行したこと、およびキットを購入せず、単品の試薬を用いて自作の実験系を使用したことで、一部節約できた。来年度は最終年度でもあり、今年度に生じた余剰金をもって実験に必要なキット等を購入する予定である。
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Leuk Lymphoma
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Nat Struct Mol Biol.
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