研究実績の概要 |
引き続き小児急性B前駆細胞性リンパ性白血病(BCP-ALL)の予後因子として重要なIKZF1変異モデル細胞の樹立に取り組んだ。組み替え効率の高いZinc Finger Nuclease (ZFN)を用いたが、欠失予定部位が10kb以上と大きかったこともあり組み替え体は得られなかった。そこで方針を変更し通常のDNA Plasmid vectorを用いてFlag-IKZF1-IK-6を作成し、細胞内局在を観察出来る一過性発現系を確立した。続いてBCP-ALLの株化細胞であるReh, RS4;11および対照としてJurkat細胞にレトロウイルス発現ベクター(GCDNsam IRES-EGFP retroviral system)を導入し、GCDNsam IKZF1-IK-6-IRES-EGFPおよびGCDNsam IKZF1-IK-1-IRES-Kusabira-orange(KO)の安定発現株を樹立した。これらは変異型としてIK-6の発現量に比例してGFPが発光し、野生型としてIK-1の発現量に比例してKOが発光するフローサイトメトリーによる解析系である。まずJurkat細胞を用いてBCP-ALLの標準化学療法薬剤を中心にVCR, ETP, DNR, THP-ADR, L-ASP, MTX, PSL, DEX, 6MP, Ara-C, MMCに対する薬剤感受性をIK-6の発現の有無で比較した。一部の抗がん剤でIK-6の発現量により薬剤感受性が異なることが示唆された。今後RS4;11およびReh細胞を用いてIK-6の発現量と抗がん剤感受性の量的関係を明らかにし、小児BCP-ALLの予後因子として確立されつつあるIKZF1の抗がん剤感受性における意義を明らかにしていく予定である。
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