研究課題/領域番号 |
24591569
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三浦 健一郎 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70408483)
|
研究分担者 |
関根 孝司 東邦大学, 医学部, 教授 (50255402)
五十嵐 隆 独立行政法人国立成育医療研究センター, 総長室, 総長 (70151256)
|
キーワード | ネフローゼ / 蛋白尿 / 巣状糸球体硬化症 / MYH9 |
研究概要 |
遺伝性ネフローゼ症候群発症の分子基盤として、これまでに糸球体上皮細胞(ポドサイト)に発現しているnephrinやpodocin、TRPC6などの研究が進められている。しかし、遺伝性でない、特発性ネフローゼ症候群発症の分子基盤についてはほとんど解明されていない。2008年、ゲノムワイド解析の手法を用いて巣状糸球体硬化症(FSGS; ステロイド抵抗性特発性ネフローゼ症候群の代表)とMYH9多型が関連することが示され、私たちはこれのコードする蛋白であるNMMHC-IIA(以下myoIIA)の正常または病的糸球体における局在およびその変化について精査を行った。 これまでネフローゼ発症との関連が指摘されていた分子群は主にポドサイトの足突起(二次突起)に存在するが、myoIIAはラット糸球体では主として一次突起に存在した。また、ネフローゼのモデルであるPAN腎症ラットにおいて、他のポドサイト関連分子であるpodocalyxinやZO-1の発現が保たれている状態で、myoIIAの発現低下を認めた。 ヒトFSGSにおいても、糸球体硬化が生じる前にmyoIIAの発現が低下し、nephrinやpodocin、synaptopodinなどの足突起を中心とする分子群の発現は保たれていた。このような変化は特発性ネフローゼ症候群、特にFSGSに特異的で、他の高度蛋白尿を呈する疾患である膜性腎症ではこの変化はみられなかった。 以上のことから、特発性ネフローゼ症候群の発症機序として、ポドサイトの足突起間の構造を維持しているスリット膜が破綻する前の段階において、myoIIAが重要な役割を担っていることが考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、研究期間内に特発性ネフローゼ症候群(特にFSGS)発症におけるmyoIIAの役割を解析し、特発性FSGSの病態解明をめざすことである。この目的のために、(1)正常糸球体ポドサイトにおけるmyoIIAの局在の解析、(2)ネフローゼ症候群(特にFSGS)や慢性糸球体腎炎患者のポドサイトにおけるmyoIIAの局在変化の解析、(3)正常および疾患での他のポドサイト関連分子の局在変化との比較、(4)腎移植後FSGS再発の患者血清を用いた培養ポドサイトでの検討(患者血清によってmyoIIAの発現および細胞骨格がどのように変化するか)、(5)細胞内Ca濃度変化とmyoIIA変化の解析、(6)myoIIAと相互作用するポドサイト分子の同定を計画している。 上述の通り、これまでに(1)~(3)を達成したところである。したがって、現在までの達成度はやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
上記の(4)~(6)、特に(4)と(6)を順次遂行していく。 特発性FSGS患者は腎移植後早期にネフローゼを再発することが知られており、またその治療として血漿交換が有効であることから、患者の循環血漿中に蛋白尿を惹起する因子、すなわち液性因子が存在することが指摘されている。そこで、腎移植後FSGS再発患者の血清を用い、これを培養ポドサイトに添加することで、ポドサイト内のmyoIIAをはじめとする関連分子の局在変化や細胞骨格変化を観察する。局在変化を認めた場合、各種細胞内小器官のマーカーを用いて、正確にどの部位に局在が変化したのかを解析する。また、免疫沈降または特殊な染色法を用いて、myoIIAと相互作用するポドサイト関連分子の同定を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
ほぼ計画どおりに使用したが、細かい調整ができなかった分が残っているため。 物品代として使用する予定である。
|