平成27年度抽出のQT短縮例と早期再分極例はなかった。平成25年度までに抽出したQT短縮39例の経過観察を引き続き行った。平成27年度に新たに不整脈による症状を認めた例や若年突然死などの家族歴が新たに確認された例はなかった。若年突然死の家族歴のある2例と若年発症の心房細動の家族歴と意識障害の既往がある1例、計3例の遺伝子検査を進めているが、原因遺伝子の特定には至っていない。以上より、本研究で定めたQT短縮症候群(以下SQTS)の診断基準:確定例 1) QTc<340でかつ以下の1つを満たすもの。①心房細動や心室細動が確認されたもの、②心肺停止からの回復者、③SQTSの家族歴。2)QTc<360でかつ遺伝子診断がついたもの。疑い例 QTc<360でかつ、以下の1つを満たすもの。①不整脈に関連の症状(失神等)、②若年突然死の家族歴。に従うと、これまで確定例はなく、疑い例は6例のままであった。一方2013年HRS/EHRA/APHRS Expert consensus statementにSQTSの診断基準が以下の通り示された。1)QTc<330または 2) QTc<360 かつ以下の1つ以上を満たすもの、① 原因となる遺伝子異常がある。② 心室頻拍・心室細動の既往(他に原因となる心疾患がない)。③ SQTS の家族歴 ④ 40歳以下の突然死の家族歴。これに従うと、今回抽出した症例のうち12例がSQTSの診断基準を見たしていた。この診断基準は成人のデータを基に策定されており、小児期・思春期での罹患率が成人と比し高くなる可能性があった。 また今回の研究対象外ではあるが、学校心臓検診を契機に発見され、遺伝子診断されたSQTS1型の自検例があった。さらに日本小児心電学会を中心に行った全国調査の情報も加え、学校心臓病検診でのQT短縮の抽出基準策定している。
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