研究課題
心筋緻密化障害noncompaction of ventricular myocardium(LVNC)は、心室壁の過剰な網目状の肉柱形成と深い間隙を特徴とした心筋症で、難治性心不全や突然死の原因となる疾患である。2006年のAHA分類でも遺伝的要素の強いprimary cardiomyopathyとして分類されているが、これまでの我々の研究では、既知のTAZ, LDB3やDTNAの遺伝子変異が認められる割合は10%未満であり、他の多数の遺伝子の関与が強く疑われた。そこで、肥大型心筋症や拡張型心筋症にみられるサルコメア遺伝子異常に着目した。本研究の目的は、心筋緻密化障害の臨床遺伝学的研究の集大成として、サルコメア遺伝子の網羅的解析を行い、発症への関与を明らかにすることである。そして、遺伝子異常が、他の心筋症とは異なるサルコメア蛋白の機能異常を引き起こし、特異な病態を引き起こしていることを立証することである。日本人LVNC患者82名を対象に、サルコメア遺伝子7種(MYH7、MYBPC3、TNNI3、TNNT2、TNNC1、TPM1、ACTC1)をdirect sequence法で解析し、遺伝子変異の臨床的意義を検討した。82名中23名(28%)で、5遺伝子(MYH7、MYBPC3、TNNC1、TPM1、ACTC1)に24変異が検出され、そのうち新規は17変異(71%)と高率であった。変異はMYH7(11)とMYBPC3(7)で全体の75%を占め、TNNC1(1)、TPM1(3)、ACTC1(2)では少数であった。遺伝子変異の有無では予後に有意差は認められなかったが、複数変異あるいは稀なTNNC1、TPM1、ACTC1遺伝子変異は予後不良因子であった。LVNC患者のサルコメア遺伝子の解析が、予後の予測および適切な治療介入の一助となる可能性が示唆された。
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