研究課題
報告(Arthritis Rheum 26 (1983), 1259-1265)を基に昨年度と同様に乳酸桿菌Lactobacillus casei細胞壁断片(LCWE)を作成した。Lactobacillus casei菌はグラム陽性桿菌であることから、LCWEの主成分はペプチドグリカンと考えられるが、作成の過程上精製の行程は含まれていないため、ペプチドグリカン以外にも様々な活性物質が含まれていると思われる。ペプチドグリカンに対する細胞表面の受容体はToll-like receptor(TLR)群のなかのTLR-2である。昨年度私たちは、細胞表面にTLR-2を発現するマウス線維芽細胞とTLR-2の発現していないグリア細胞を用いてLCWEに対する反応性を評価した結果、TLR-2の発現に関わらずLCWEに対する細胞内シグナルが惹起されることを見出した。今年度は昨年度使用した細胞とは異なる細胞を用いてLCWEのキャラクターを評価した。チャイニーズハムスター卵巣細胞はTLR-2を発現てないが、LCWEで刺激すると炎症シグナルNF-kB経路が活性化された。この結果は昨年度の結果を支持するものであり、LCWEはペプチドグリカンの受容体以外の受容体も惹起することを示唆している。その候補として細胞内受容体であるNOD2が最有力候補の一つである。実際、TLR-2を発現しておらずLCWEにより細胞内シグナルが惹起される細胞(たとえば、昨年度使用したグリア細胞や本年度使用したチャイニーズハムスター細胞)ではNOD2受容体の存在をウエスタンブロットで確認した。さらに、NOD2特異的刺激薬によるそれら細胞の刺激はLCWEの細胞内シグナルを模倣することも突き止めた。
3: やや遅れている
LCWEは単一の物質ではないことが以前から予測されていたが、過去の研究者たちの報告ではその点が曖昧であった。LCWEはマウスに川崎病様血管炎を誘導するが、川崎病の新規治療戦略を探求するうえで、LCWEによる血管炎誘導メカニズムを解明しなければならない。そのために、LCWEに作用する受容体の実態に迫る必要に迫われた。その結果、本年度はLCWEが作用する分子の解明に力を注いだため、予定していた当初の予定よりやや遅れる結果となった。しかしながら、本年度は「LCWEの作用には細胞内受容体NODグループの関与も考慮」しなければならないことが判明したことは、川崎病の発病の解明に多大に貢献すると思われる。また、本年度の結果は、次年度以降のLCWEによる川崎病研究などの実施や評価・検討に極めて有用であると思われる。
本年度は、LCWEの受容体について評価した。次年度(平成26年度)は、本年度で検討されなかった項目の実施と他の細胞系や小動物系での検討を行う。川崎病では様々なサイトカインの高値が報告されており、かつ強度の発熱の持続が見られる。LCWE刺激でのサイトカイン変動、体温などの病態生理学的な指標の変化、かつ各選択的PDE阻害剤が与える影響、血管炎および冠動脈瘤形成に与える影響などの評価を行う。
平成25年度はLCWEの受容体探索に力を注いだため、予定していた細胞や動物実験のいくつかが次年度の実施へと先送りとなった。また、情報収集や成果発表のための学会参加も次年度へ先送りとしたため、未使用額が生じた。本年度の未使用額も含めて、次年度では研究推進のために、主に物品費、細胞および動物実験関連経費に充てる。また、成果発表や情報収集のために旅費およびその他(英文校正費、投稿料など)も充てる。50万円以上の物品の購入はない。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件)
Circ J.
巻: 78 ページ: 701-707
doi.org/10.1253/circj.CJ-13-1162
Europace
巻: 15 ページ: 1259-66
doi: 10.1093/europace/eut053. Epub 2013 Apr 19.
J Microbiol Immunol Infect.
巻: 46 ページ: 389-92
doi: 10.1016/j.jmii.2012.03.004.
Mol Clin Oncol.
巻: 1 ページ: 281-285
DOI: 10.3892/mco.2013.65
Sci Rep.
巻: 3 ページ: 1763
DOI: 10.1038/srep01763
J Cell Biochem.
巻: 114 ページ: 2454-2460
doi: 10.1002/jcb.24593.
日本小児循環器学会誌
巻: 29 ページ: 322-327