研究実績の概要 |
報告(Arthritis Rheum 26 (1983), 1259-1265)を基に乳酸桿菌Lactobacillus casei細胞壁断片(LCWE)を作成し、使用した。通常川崎病患児では5日間以上の高熱が観察されるが、今回用いたLCWEをラットに投与してもごく局所的な発熱が記録されるのみであり、数日におよぶ長期間の発熱は観察されなかった。川崎病のその他症状も観察されなかった。このことはLCWEモデルが純粋にヒト川崎病のモデルとなるか疑問の余地があることを示している。しかしながら、LCWE投与後のラット行動量について検討すると、生理食塩水投与群(コントロール群)と比べて行動量が多くなっていることが観察された。この行動量の変化等についは今後さらに検討する必要があると判断した。 一方、Lactobacillus casei菌はグラム陽性桿菌であることからLCWEの主成分はペプチドグリカンと考えられるが、作成の過程上精製の行程は含まれていないためペプチドグリカン以外にも様々な活性物質が含まれ、ペプチドグリカンに対する細胞表面の受容体であるToll-like receptor(TLR)2が発現しない細胞においてもLCWEが刺激することを一昨年、昨年度と報告した。そのためTLR-2を介さないシグナルにおいてもホスホジエスタラーゼ阻害薬が有効であるかを検討したところ、細胞死を誘導するシグナル等を抑制すること突き止めた。このことは、ホスホジエスタラーゼ阻害薬がLCWEの下流の様々なシグナルや現象を抑制することを示唆していると思われた。
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