研究課題/領域番号 |
24591573
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 太一 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20422777)
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研究分担者 |
深澤 佳絵 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (00612764)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 肺高血圧症 / 交感神経 / リモデリング |
研究概要 |
難治性疾患である肺高血圧発症において、血管周囲交感神経の肺血管リモデリングにおける役割を解明するために、ラットに対してモノクロタリンの皮下注射を行うことにより肺高血圧モデルラットを作成した。モノクロタリンの皮下注射を行った日から16日後に血行動態評価を行ったうえ屠殺し、肺組織を得た。モノクロタリン投与群、生理食塩水の皮下注射によるコントロール群の2群において、得られた肺組織に対して、ヘマトキシリンエオジン染色、エラスチカワンギーソン染色にて肺血管のmorphometryを行い、肺血管病変ができていることを確認した。また、右心室重量測定により右室肥大も確認した。その上で、血管周囲交感神経の分布について交感神経マーカーとしてのチロシンヒドロキシラーゼに対する抗体を用いて、肺血管に対する分布の差異を2群間で比較した。肺高血圧病変の中心である50-200μmの径の肺血管周囲にはいずれの群においてもチロシンヒドロキシラーゼ陽性を示す細胞は極めてまれにしか存在しなかった。一方で、さらに径の大きい肺血管の周囲にはチロシンヒドロキシラーゼ陽性を示す細胞はいずれの群においても認められたが、肺高血圧群で少なかった。これらの結果はαSMA抗体との蛍光多重染色においても同様の結果が確認された。ラットモノクロタリン誘発肺高血圧モデルでの肺高血圧病変の形成においては、交感神経細胞も含めたリモデリングが起こっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は肺高血圧発症において、血管周囲交感神経の肺血管リモデリングにおける役割を解明するため、初年度ではラットモノクロタリン誘発肺高血圧モデルラットの作成と肺高血圧病変、血行動態評価を行う予定としていた。これについては肺高血圧病変の確立を肺血管病理、血行動態評価、右室肥大の評価などから行っている。続いて、肺血管周囲交感神経の評価を行ったが、当初予定していた共焦点レーザー顕微鏡によるαSMA抗体との多重染色による評価ではチロシンヒドロキシラーゼ陽性細胞の存在は確認できたものの、分布の詳細な評価が困難であったため、ABC法を用いた免疫染色により、詳細な分布の評価を行うことを追加した。これにより、肺血管交感神経はより中枢側に存在すること、また、チロシンヒドロキシラーゼ陽性細胞が肺高血圧群の肺血管周囲で減少していることから、肺高血圧病変の形成においては、交感神経細胞も含めたリモデリングが起こっている可能性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
エンドセリンは神経線維の神経支配形成に関与していることが報告されている。そこで、本年度は、モノクロタリン誘発肺高血圧モデルラットに対して、肺高血圧治療薬であるエンドセリン拮抗薬を16日間連続腹腔内投与した肺高血圧治療群を作成し、モノクロタリン皮下注後生理食塩水を同期間投与した群(肺高血圧群)、あるいはモノクロタリン投与をせず、生理食塩水を同期間投与した群(コントロール群)の3群を作成する。これら3群において、肺高血圧、右室肥大の評価とmorphometryを行い効果を確認した上で、エンドセリン受容体Aおよびエンドセリン受容体Bが交感神経に存在するかを免疫染色で確認する。これらによってエンドセリン拮抗薬による治療の肺血管周囲交感神経への作用と意義を検討する。また、血中カテコラミン3分画濃度をキットを用いてELISAで測定し、カテコラミン分泌を3群間で比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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