研究課題/領域番号 |
24591573
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 太一 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20422777)
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研究分担者 |
深澤 佳絵 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (00612764)
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キーワード | 肺高血圧 / 交感神経 / リモデリング / エンドセリン |
研究概要 |
本研究では、肺高血圧症での血管周囲交感神経の肺血管リモデリングにおける役割を検討している。本年度は、神経線維の神経支配形成にエンドセリンが関与することが報告されているため、肺高血圧治療薬であるエンドセリン拮抗薬アンブリセンタンを用いて、肺高血圧病変での血管周囲交感神経に対するエンドセリンの役割を検討した。モノクロタリン(以下MCT)誘発肺高血圧モデルラットに対して、アンブリセンタンを16日間連続経口投与した肺高血圧治療群を作成し、MCT皮下注後生理食塩水を同期間投与した群(肺高血圧群)、あるいはMCT投与をせず、生理食塩水を同期間投与した群(コントロール群)の3群を作成した。MCTの皮下注射を行った日から16日後に血行動態評価を行ったうえ屠殺し、肺組織を得た。肺高血圧治療群、肺高血圧群、コントロール群の3群において、右室圧、右室肥大の評価を行い、得られた肺組織に対して、ヘマトキシリンエオジン染色、エラスチカワンギーソン染色にて肺血管のmorphometryを行った。これらの結果、肺高血圧治療群で、右室圧および右室肥大の改善が確認された。血管周囲交感神経の分布について抗チロシンヒドロキシラーゼ(以下TH)抗体を用いて、肺血管に対する分布の差異を3群間で比較した。肺高血圧病変の中心である50-200μmの径の肺血管周囲には治療群においても肺高血圧群、コントロール群と同様にTH陽性を示す細胞は極めてまれにしか存在しなかった。一方で、さらに径の大きい肺血管の周囲にはTH陽性を示す細胞はいずれの群においても認められたが、肺高血圧群と治療群で明らかな差は見られなかった。ラットMCT誘発肺高血圧モデルでの肺高血圧病変において、血管周囲交感神経の分布に対するエンドセリンの役割は経時的な評価も検討する必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は肺高血圧病変形成における、血管周囲交感神経の肺血管リモデリングに対する役割を解明することを目的としている。肺高血圧症の病態にも関与するエンドセリンは、神経線維の神経支配形成にも関与することが報告されている。そこで本年度は、肺高血圧病変における、血管周囲交感神経に対するエンドセリンの役割を検討するために、ラットMCT誘発肺高血圧モデルラットに対するエンドセリン拮抗薬アンブリセンタンによる治療モデルの作成と肺高血圧病変、血行動態評価を行う予定としていた。ラットのMCT肺高血圧モデルにおけるアンブリセンタンの有効性はこれまで進行した肺高血圧症での報告しかなかったが、今回、MCT投与後16日の比較的病初期の段階から、肺高血圧病変の改善が認められることを、肺血管病理、血行動態評価、右室肥大の評価などから初めて示すことができ、今後の動物モデルでの肺高血圧研究に資すると考えられた。一方で、肺血管周囲交感神経の評価においては、径の大きい肺血管における血管周囲交感神経の分布は治療群でも認められたが、肺高血圧群との明らかな差異は認められなかったため、新しい課題として経時的な変化をみるなどの検討が必要と考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
エンドセリン拮抗薬による交感神経への影響は、肺血管周囲交感神経のリモデリングとして明らかな差異を病理上認めなかった。これは申請当初にも想定していたことであり、代替アプローチとして、MCT投与後の評価する日数を変えて、病変形成過程の中で関与している時期があるかを検討する。肺高血圧群、治療群、コントロール群の3群において、経時的に肺高血圧、右室肥大の評価とmorphometryを行い、効果が確認されれば、エンドセリン受容体Aおよびエンドセリン受容体Bが交感神経に存在するかを免疫染色で確認する。また、血中カテコラミン3分画濃度を測定し、カテコラミン分泌を3群間で比較する。また、神経細胞と平滑筋細胞を共培養あるいは平滑筋細胞を単独で培養し、エンドセリン刺激での平滑筋細胞形質への影響を検討する。これらによって肺高血圧病変におけるエンドセリンの肺血管周囲交感神経への作用と意義を検討する。
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