研究課題
ヒト肺動脈性肺高血圧類似ラットモデル(Sugen/hypoxiaモデル)を用いて、その肺血管病変の進展過程、薬物的退縮過程を検討した。1 進展過程の検討Sugen/Hypoxiaモデルを用いて、刺激開始後3、5、8、13週に心カテによる血行動態評価、屠殺後の肺血管の病理学的、分子生物学的解析を行った。PAHモデルにおいて、右室収縮期圧、細胞性内膜病変、線維性内膜病変、叢状病変、血管周囲macrophage数、macrophage浸潤内膜割合は進行性に増加した。内膜病変、叢状病変の内腔面に単層内皮細胞、支持組織にαSM actin陽性細胞を認め、内外弾性版の断裂を認めた。細胞性内膜病変は脱分化平滑筋細胞、線維性内膜病変は再分化した平滑筋細胞、叢状病変は筋芽細胞から構成され、細胞性内膜病変、叢状病変には、増殖性核蛋白(PCNA)陽性細胞、macrophage、vimentinの発現を認めた。肺組織での炎症性遺伝子、プロテアーゼの発現は、初期(3週)から亢進し、持続ないし進行した2 退縮過程の解析Sugen/Hypoxiaモデルを用い、早期治療群は、収縮期右室圧、右室/左室重量比、肺血管閉塞病変の割合、中膜肥厚の割合を有意に低下させた。一方、後期治療研究ではマシテンタン治療群の肺血管閉塞病変の割合は溶媒群より低下したが、治療前PH群とは有意差なくreverseしなかった。分子機序では、治療は早期・後期治療研究共に閉塞性肺血管病変における増殖細胞の割合を低下させたが、早期治療研究のみで細胞死の割合を増加さた。以上から、網羅的発現解析により、病変の増悪、退縮に関わる分子経路を検索中である。
1: 当初の計画以上に進展している
今回のSugen/Hypoxiaモデルは、その作成に再現が困難と言われていたが、その再現性が極めて優れており、実験が問題なく進行した。また、その退縮過程の解析の為の薬物的介入により、予想以上の退縮効果が認められ、最初の実験系の確立が順調であった。また現在の免疫染色、遺伝子発現解析のシステムが順調に稼働しており、それも順調に進行している要因である。現在、網羅的遺伝子発現解析の結果がうまく進んでおり、予定通りないしそれ以上の進行状況と考える。
これまでの検討で明らかとなった結果から炎症が病変の進展過程に強く関連する事が明らかとなった。そこで以下の実験を行っている。1 その受容体拮抗薬を用いて、薬物的抑制ないし退縮が可能か否かを、血行動態、病理変化とその分子機序を検討する。2 網羅的遺伝子解析により、幾つかの標的分子経路が明らかとなって来た。そこで、それらのコンピューター解析を進めて、標的を絞り込み、実際に新規薬剤を用いて、その効果を検討して行く。
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