研究課題
基盤研究(C)
QT延長症候群において、運動ストレスは不整脈発症の誘因となるが、そのリスクは患者ごと、原因遺伝子さらに変異によって異なる。そのため、研究の初年度は、まず臨床的な側面から、遺伝子型・変異によって、運度負荷時の心電図がどのように変化しているかを患者ごとに調べた。その結果、若年者QT延長症候群患者の多数が変異を同定されるKCNQ1およびKCNH2遺伝子保持者では、これまでの報告と同様、KCNQ1変異保持者では運動時に著明なQT延長をきたしていた。また変異箇所においても運動時のQT延長には差があった。KCNQ1は心筋再分極に重要な遅延整流性カリウムチャネルをコードしているが、そのチャネルのカリウムイオン通貨部位(ポア)領域および細胞内に存在するCリンカー領域に変異を持つ患者では、運動時のQT延長が著明であった。これらの所見を細胞レベルで証明するため、ポア領域に存在する変異、G269Sについてパッチクランプ法を用いて解析を行った。その結果、運動負荷時の交感神経刺激を模倣したイソプロテレノール負荷において、本来であれば増加するはずのカリウム電流が、変異チャネルにおいては抑制されていることを証明した。この結果は、すでに論文として投稿中である。また、まれなQT延長症候群の原因遺伝子であるKCNE1は、KCNQ1のβサブユニットとして遅延整流性カリウムチャネルを構成しているが、その変異保持者においても、運動負荷に対するQT時間反応の違いが明らかになった。KCNE1は、膜一回貫通型のタンパクをコードするが、細胞内に位置するC端がβ刺激において重要であることが明らかになっている。そのためC端の変異2種類についてパッチクランプ法で解析し、cAMPに対する反応性が異なることを明らかにし、北米不整脈学会で報告予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要に記したように、これまでに集積したQT延長症候群患者においては、原因遺伝子に変異が同定された患者の抽出、臨床所見および運動負荷試験の評価をすでに行っている。また一部の遺伝子変異については、パッチクランプ法を用いた機能解析を行い、論文投稿・学会発表を行っている。
今後、さらにQT延長症候群症例を集積し、遺伝子型と運動負荷試験の結果を評価する予定である。また、これまでにパッチクランプ法での解析を行っていない遺伝子変異についても、解析を行い、β刺激に対する反応性を再現できるかどうか確認し、遺伝子変異ごとの運動負荷に対するリスク評価を行っていく。さらに、QT延長症候群2型の原因遺伝子であるKCNH2変異でも運動負荷によってQT延長をきたす症例があり、これらの変異についても同様の解析を行っていく予定である。
研究費の主な用途は、遺伝子変異解析およびパッチクランプによる電気生理学的機能解析に必要な試薬代である。さらに、患者遺伝子採取に必要な交通費、連絡費などに使用予定である。また、研究成果発表のため、国内外の学会への出席および論文投稿にかかる費用を計上している。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)
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