研究課題/領域番号 |
24591577
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大賀 正一 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60233053)
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研究分担者 |
田中 珠美 九州大学, 大学病院, 研究員 (60423547)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 血球貪食症候群 / EBウイルス / リンパ増殖性疾患 / 造血細胞移植 / 免疫化学療法 |
研究概要 |
血球貪食症候群/血球貪食性リンパ組織球症(HLH)のうち、遺伝性HLH(FHL2-5, XLPなど)とEBウイルス関連HLH(EBV-HLH)の治療法について検討し、本邦における造血細胞移植(HCT)後HLHの疫学調査を行った。また、HLHと鑑別が問題となるいくつかのウイルス感染症例を経験して報告した。FHLに対する非血縁臍帯血移植の成績向上はわが国の大きな成果であるが、これを全国規模で集積し、乳児期における骨髄非破壊的前処置の至適強度について解析し報告した(Am J Hemaol 2012)。FACSによるスクリーニング法が向上したことにより、最近乳児期早期の診断例が増加している。このような例には非放射線前処置が望ましいが、実際には海外でも晩期生着不全が問題となっている。中枢神経病変が主体の非定型FHLに対する移植適応、移植後混合キメラの問題が、今後の課題となることを経験した。EBV-HLHについては20年間の自験例の病態と予後因子を検討し、etoposideを使用しない早期の免疫調節療法が約60%の初感染小児例に寛解をもたらすこと、近年年長児の初感染EBV-HLHが増加していること、さらに成人例の予後が不良であることを報告した(Pediatr Blood Cancer 2012a)。HCT後HLHの全国調査(Pediatr Blood Cancer 2012b)から、生着反応との鑑別が難しく生着不全を起こさない免疫制御療法の確立が必要とされる。今後、抗体療法を用いた細胞傷害性薬剤を使用しない包括的治療戦略を探索することが重要と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由)FHLについては、臍帯血移植例の全国規模の集計データから、早期診断例、混合キメラ、および中枢神経病変を有する例の問題点を示唆したが、これらを最近自験例として経験した。包括的治療法の問題点と対策を実行しながら、この対処法について全国規模で調査中であり研究を進めている。EBV-HLHについては、段階的治療法の方針を確立できそうであるが生物学的製剤の適応に関しては評価が難しい。臨床例とともに、この病変と病態の再現が可能となったモデルマウスを解析することにより検討する。
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今後の研究の推進方策 |
HLHに関する感染細胞と宿主要因に関して、欧米と日本では疾患概念の違いが、この数年の間に明らかになってきた。この疾患は宿主の遺伝的感受性の差に基づくものであると想定されるが、造血器腫瘍のWHO分類2008では「小児全身性EBV陽性リンパ増殖症」と定義されたもののうち、EBV-HLHの位置づけが明確でない。国際共同研究を通じて、欧米とアジアにおける症例の特徴をより詳細に比較検討することが必要である。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在の診断及び病態研究を中心に継続して使用する。これまでの方針のとおり、疾患スクリーニングに用いるFACS抗体、遺伝子解析試薬、疾患モデルマウスの解析試薬、および治療法と予後に関する調査研究に用いる。
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