研究課題
血球貪食症候群/血球貪食性リンパ組織球症(HLH)のうち、遺伝性HLH(FHL2-5など)とウイルス関連HLH(EBV-HLHほか)の診断と治療について検討した。遺伝性HLHでは、FHLに対する非血縁臍帯血移植の方法について全国規模の多施設調査を行い、骨髄非破壊的前処置の有用性を示してその至適強度について報告した(Int J Hemaol 2013)。顆粒異常を呈するChediak東症候群の臨床像を検討し、HLHの合併について調査した(Pediatr Blood Cancer 2013)。ウイルス関連HLHでは、全国調査からEBV-HLHの予後因子を検討し、早期の免疫調節療法がとくに初感染小児例に有用で、成人例よりも予後良好であることなどを明らかにした(Pediatr Blood Cancer 2014)。重症エンテロウイルス関連HLHの新生児例を経験し、その適正治療について報告した(J Infect Chemother 2013)。予後不良で遺伝性HLHとの鑑別が困難な新生児ウイルス性HLH(単純ヘルペス及びエンテロウイルスなど)に対する新たな抗サイトカイン療法の開発が必要である。HLHをおこす亜急性壊死性リンパ節炎患者の末梢血リンパ球の遺伝子発現パターンから、リンパ腫関連HLHと鑑別する方法を提唱した(J Clin Immunol 2013)。日本ではHLHの早期診断が進み、新生児、乳児の症例が増加してきた。これらの問題点について韓国血液学会にて招請講演を行った。造血幹細胞移植の適応、これに至るまでの抗腫瘍薬(etoposideなど)を使用しない免疫調節療法、さらに移植前処置の適切な軽減について、更なる検討が必要である。
1: 当初の計画以上に進展している
FHLについては、造血細胞移植の成績について全国規模の解析を終え、骨髄非破壊的前処置が臍帯血移植においても有用であることを明らかにすることができた。早期診断例、混合キメラ、および中枢神経病変を有する例の問題点についてさらに適切な時期と方法を検討していく。HLHの包括的診断法はFlow cytometryを用いる方法で国内ではほぼ確立したが、新生児発症例の肝不全が新たな問題として浮き彫りになった。新生児に対する治療法についてはさらに症例集積を継続し、解析を進めている。EBV-HLHについても全国調査の結果がまとまり、段階的治療方針をほぼ確立した。一方、新たな生物学的製剤の適応に関してさらなる検討が必要である。
HLHは宿主の遺伝的感受性の差に基づく症候群である。EBV-HLHに関する感染細胞と宿主要因に関しては、欧米と日本では疾患概念の違いが明らかになってきた。造血器腫瘍のWHO分類2008で「小児全身性EBV陽性リンパ増殖症」と定義されたもののうち、EBV-HLHの位置づけが明確でない。国際共同研究を通じて、とくにEBV関連HLHに関する欧米とアジアの症例の特徴を比較検討する。また新生児肝不全例などに対する新たな抗サイトカイン療法を検討したい。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)
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