研究課題/領域番号 |
24591578
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
野村 裕一 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (90237884)
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研究分担者 |
江口 太助 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (20535687)
西 順一郎 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40295241)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | インピーダンス / 川崎病 / 硬性浮腫 / 重症度 |
研究概要 |
【多周波数インピーダンス測定法の確立】MLT-50を用いて健常児34例で①全身:手-足(尺骨茎状突起と同側下肢の外果間)、②手-膝(尺骨茎状突起と同側下肢の腓骨頭間)、③手(尺骨茎状突起と肘外顆間)、④肘-足(肘外顆と同側下肢の腓骨頭間)、⑤足 (外果と腓骨頭間)のインピーダンス (Imp)値測定を行い周波数0および∞におけるImp値(それぞれR0とR∞)を算出した。健常児のR0とR∞値は①全身723±91/535±81、②手-膝558±53/423±64、③手147±41/113±40、④肘-足570±64/435±61、⑤足168±47/131±41だった。②手-膝+⑤足、③手+④肘-足のR0とR∞値は②手-膝+⑤足 726±90/555±89、③手+④肘-足 713±89/547±73と①全身と同程度だった。 【川崎病における検討】川崎病急性期15例において31回検討し健常児と比較した。川崎病児のR0値は①全身 761±110、③手 170±33、⑤足 188±31であり、手や足のImp値は健常児より有意に高値だった(③ P=0.012、⑤ P=0.042)。R∞値は①全身 616±125、③手 138±28、⑤足 150±31であり、全て川崎病児が有意に高値だった(①P=0.003、③P=0.004、⑤P=0.043)。R∞とR0の比率 (%) (R∞/R0)は① 健常児/川崎病児; 73.9±4.1/80.6±10.4 (P=0.001)、③75.6±11.9/81.1±8.7 (P=0.036)⑤78.1±8.9/79.5±9.5 (P=0.54)と足以外では川崎病児が有意に高値だった。 【考案】小児の手足のImp測定でもその正確性が確認され本研究遂行が可能であることを確認した。健常児と川崎病児でImp値に有意差を認め、川崎病の疾患病態を反映する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【多周波数インピーダンス測定法の確立】 小児におけるインピーダンス(Imp)値測定方法を確立することができた。小児の短い手足のImp測定でも、全身のImp値と前腕と肘から足のImp値の和に差がなく、また手から膝と下腿のImp値の和と差がないことを確認し、その測定の正確性が確認され、今後の研究遂行に繋げる結果が得られた。 【川崎病児における検討】症例数がまだ少ないながら、健常児と川崎病患児の解析を行うことができた。健常児と川崎病患児のImp値には有意差があり体内の水分分布に差があることが確認され、今後の更なる解析を進めていくことが可能となった。Imp値は測定距離に比例し断面積に反比例することから、手や足のImp値を測定距離/断面積で除して補正した値を検討し、R0値は③手:健常児/川崎病児 175±46/213±54 (P=0.002)、⑤足: 262±62/307±50 (P=0.002)であり、R∞は③手: 133±45/173±50 (P=0.001)、⑤足: 205±57/244±46 (P=0.004)と全て川崎病児が有意に高値と、健常児と川崎病児のImp値の差が更に明確化し、Imp値検討が原理的にも正しいことが示された。 【硬性浮腫の定量評価および重症度評価】川崎病患児での硬性浮腫の評価もImp計測に併せて行っており、今後解析を開始する準備ができている。川崎病患児の免疫グロブリン大量療法への反応性や冠動脈後遺症の情報収集も行っている。 【血管内皮細胞成長因子値およびサイトカイン測定】血管内皮細胞増殖因子測定を開始しており、今後解析を開始する準備ができている。各種血液検査値との関連の検討も行える段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
【症例数】川崎病患児の例数を増やしインピーダンス測定を行っていく。主要症状の定量評価、免疫グロブリン大量療法(IVIG)への反応性、冠動脈後遺症に関する情報収集を進める。サイトカイン値の解析も行う。健常児の協力依頼を進め、健常児の症例数増加を進める。発熱コントロール時のインピーダンス測定を行い、症例数を増やしていく。E-indexと各項目との関連性の検討や重症化病態解明についても進めて行く。 【川崎病重症度評価、硬性浮腫の評価】川崎病重症度評価としてインピーダンスによるIVIG不応やCAAの予測を確立するために、インピーダンス値と硬性浮腫の主治医による評価との関連を検討する。IVIG反応性や冠動脈後遺症の程度との関連についても検討する。IVIG治療前の血液検査値やVEGF値との関連についても検討していく。 【川崎病患児のIVIG治療効果の早期評価】IVIG治療を開始する際に協力できる症例を選んで、インピーダンスを治療前から継続的に評価し、治療反応例と不応例をインピーダンスの継時的変化から早期に識別可能かどうか検討する。 【川崎病の診断補助】硬性浮腫との相関の検討から得られたインピーダンス値のCut-off値を設定し後方視的に精度を検討する。インピーダンス値による硬性浮腫のCut-off値が決定できたら、川崎病入院時の診断補助に有用であるか検討する。 【川崎病重症度評価における臨床応用】川崎病が疑われる患児の入院に際し、インピーダンス値による硬性浮腫の評価や川崎病の重症度評価、IVIG治療反応性予測の評価を行い、治療反応に関する経時的評価も併せて臨床現場での応用、前方視的研究に向けての検討を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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