研究課題/領域番号 |
24591578
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
野村 裕一 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (90237884)
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研究分担者 |
江口 太助 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (20535687)
西 順一郎 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40295241)
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キーワード | インピーダンス / 川崎病 / 硬性浮腫 / 重症度 / 免疫グロブリン反応性 |
研究概要 |
川崎病は血管炎でありその特徴である血管透過性に関連する硬性浮腫を四肢の多周波数インピーダンス法から評価することで、硬性浮腫を客観的に評価することが可能となり、川崎病の重症度評価に有用と考えられる。 【対象および方法】治療前後の川崎病患児と健常児を対象とした。多周波数インピーダンスをMLT-50(東レ・メディカル株式会社)による全身(尺骨茎状突起と同側下肢の外果間)と前腕(尺骨茎状突起と肘外顆間)、下腿(外果と腓骨頭間)の周波数0と∞のインピーダンス (Imp)値(R0とR∞)として計測した。Imp値は距離に比例し断面積に反比例することから、Imp値を測定間距離で除し測定部位断面積を掛けた補正値も用いた。川崎病児の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)値を測定し、血小板単位のVEGF値(pltVEGF)も検討した。 【結果】健常児49例と川崎病患児治療前38例、治療後46例で検討した。川崎病児と健常児では除脂肪重量に占める総水分率や細胞内液率に差を認めなかった。総水分量に対する細胞外液率は川崎病児で治療前後ともに有意に高値だった。Imp値のR0とR∞は全身や前腕、下腿で健常児と川崎病患児で差を認めなかった。前腕の補正Imp値は健常児より有意に高値であり、治療前から治療後に低下していた(P値健常児vs治療前/後、R0;<0.001/0.046;R∞ ;P<0.003/0.022)。VEGF値は川崎病患児の治療後に有意に高値だったがpltVEGF値では差を認めなかった。pltVEGFと各Imp値では相関を認める項目はなかった。 【結論】小児の短い手足においてもImpの再現性を有する正確な測定は可能であり、その評価には測定間距離や断面積を考慮した補正Imp値が有用だった。四肢の補正Imp値は川崎病の治療前及び治療後で健常児より有意に高値であり治療後に低下していることから、その病勢を反映していることが示された。今後、治療抵抗性や冠動脈後遺症との関連も含めて検討を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多周波数インピーダンス値の検討を症例数を増やして検討を行うことができ、川崎病に特異的な所見を得ることができた:MLT-50(東レ・メディカル株式会社)を使用して、多周波数インピーダンスを周波数0と∞のインピーダンス (Imp)値(R0とR∞)を測定した。Imp値は距離に比例し断面積に反比例することから、Imp値を測定間距離で除し測定部位断面積を掛けた補正値も用いた。健常児49例と川崎病患児治療前38例、治療後46例で検討した。健常児の体脂肪率や細胞内液率には差を認めなかった。総水分量に対する細胞外液率は川崎病児で治療前後ともに有意に高値だった(健常児/川崎病治療前/後(%);31±5/35±10/36±8、P=0.029と0.0005)。Imp値のR0とR∞は全身や前腕、下腿で健常児と川崎病患児で差を認めなかった。前腕の補正Imp値は健常児より有意に高値であり、治療前から治療後に低下していた(健常児/治療前/治療後、R0(Ωcm)、164±35/197±50/181±46、P値健常児vs治療前/後、P<0.001/0.046;R∞ (Ωcm)、125±36/151±42/144±44、P=0.003/0.022)。下腿の補正Imp値も同様の傾向だった。 硬性浮腫の定量評価および重症度評価の検討を進めることができた:川崎病患児での硬性浮腫の評価もImp計測に併せて行っており、今後Imp値との関連について解析を開始する。免疫グロブリン大量療法 (IVIG)への反応性や冠動脈後遺症 (CAA)との関連について解析も開始している。 血管内皮細胞成長因子値およびサイトカイン測定の検討を行うことができた:川崎病児の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)値を測定し、血小板単位のVEGF値(pltVEGF)も検討した。VEGF値は川崎病患児の治療前後で有意差を認め治療後に高値だった(前/後 787±342/1245±877、P=0.039)。しかしpltVEGF値での差は認めなかった(前/後 15.4±6.1/17.9±7.2、P=0.3350)。pltVEGF値と各Imp値では相関を認める項目はなかった。
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今後の研究の推進方策 |
【症例数】川崎病患児の例数を更に増やしインピーダンス測定を行っていく。主要症状の定量評価、免疫グロブリン大量療法(IVIG)への反応性、冠動脈後遺症 (CAA)に関する情報を増やしていく。発熱コントロール児のインピーダンス測定を開始しており、その症例数を増やしていく。 【川崎病重症度評価、硬性浮腫の評価】川崎病重症度評価としてインピーダンスによるIVIG不応やCAA予測を確立するために、インピーダンス値と硬性浮腫の主治医による評価との関連の検討を継続して進める。IVIG反応性やCAA程度との関連についての検討も症例を増やして継続する。IVIG治療前の血液検査値やVEGF値との関連についても例数を増やした検討を継続する。 【川崎病患児のIVIG治療効果の早期評価】IVIG治療を開始する際に協力できる症例を選んで、インピーダンスを治療前から継続的に評価し、治療反応例と不応例をインピーダンスの継時的変化から早期に識別可能かどうか検討する。 【川崎病の診断補助】硬性浮腫との相関の検討から得られたインピーダンス値のCut-off値を設定し後方視的に精度を検討する。また川崎病児と発熱コントロール児との比較も含めての検討からもCut-off値を検討する。インピーダンス値による硬性浮腫のCut-off値の川崎病入院時の診断補助の有用性を検討する。 【川崎病重症度評価における臨床応用】川崎病が疑われる患児の入院に際し、インピーダンス値による硬性浮腫の評価や川崎病の重症度評価、IVIG治療反応性予測の評価を行い、治療反応に関する経時的評価も併せて臨床現場での応用、前方視的研究に向けて検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
VEGF測定費用が予定よりわずかに低い額で行うことができた。少額であったことから無理に消耗品等の消化で0にしなかった。 少額であり、次年度の消耗品等で使用予定である。
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