研究実績の概要 |
新生児および乳児期から幼児期にかけ、消化機能、バリアー機能、腸内細菌叢の変化などにともない、粘膜免疫機能にダイナミックな変化が起こっている。そこで、リンパ濾胞増殖症、消化管アレルギー、食物過敏性腸症、潰瘍性大腸炎、クローン病等の小児消化器疾患および正常対照群を対象とし、それら粘膜における炎症性シグナル分子の発現をmicroarray法, real-time PCR法, 免疫組織染色などを用い解析し、新生児期から乳幼児期および学童期にかけての消化管粘膜免疫機構の発達について検討した。 その結果、新生児期の消化管アレルギー患児の粘膜において、CCL11(eotaxin-1)やCXCL-13の発現亢進を認めた。特に好酸球浸潤と関連の深いCCL11の発現は新生児期に、リンパ濾胞増殖因子であるCXCL13の発現は乳児期により強く発現しており、新生児期のより重篤な好酸球浸潤と乳児期のより強いリンパ濾胞増殖性変化を反映していた。 一方、学童期の炎症性腸疾患の粘膜を用いた検討では、IFN-gamma, IL-6, IL-8, STAT4, GATA3, CCR7、CXCL-9, -10, -11などの発現亢進を確認した。特にクローン病ではCXCL-9, -10, -11が、潰瘍性大腸炎ではMMP-1, 3, 7,10の発現が、それぞれ有意に亢進していた。免疫組織染色による検討ではCXCL-9とレセプターであるCXCR-3の病変部局所での発現亢進を確認した。以上より、小児期発症の炎症性腸疾患においては、リンパ濾胞形成因子であるCXCL-13、炎症性ケモカインであるCXCL-9およびCXCR-3関連分子などの発現が重要な因子であることが示唆された。 本検討で両者に発現の亢進が確認されたCXCL13は、B細胞を誘導するリンパ濾胞形成因子であり、特に新生児期からの食物に対するIgAの産生や寛容の誘導に深く関わっている。その発現亢進は、新生児期から小児期にかけ欠かせない免疫応答であると考えられる一方、小児期の炎症性腸疾患においては、その炎症増強に深く関わっていることが示唆された。
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