研究課題
既知の原因遺伝子変異を認めないIPAH患者において、Delta/Notchシグナル伝達経路に関係する遺伝子変異検索を行った。その結果、2名の患者において、同シグナル伝達経路に関与するX遺伝子の変異を検出した。我々はX遺伝子発現ベクターを作製した後にmutagenesisを行い、X遺伝子変異体の発現ベクターを作製した。その後、培養細胞にこのベクターを導入し、テトラサイクリンを利用したTet on システムにより、安定発現株を複数作製した。野生株あるいは変異体発現ベクターが導入された 安定発現株を一定期間培養して免疫染色を行ったところ、変異体発現株ではX蛋白の発現量が減少していること、48時間経過した後にX蛋白の残存量が大きく減少していることがあきらかになった。さらにこれらの安定発現株内の各種小胞体シャペロンの発現量と局在についても検討したところ、変異体発現株では小胞体シャペロンが著しく減少していること、さらに一部のシャペロンが小胞体から核内へ移行することがわかった。また、各安定細胞株の細胞増殖能および細胞生存性を検討したところ、変異体発現株は野生株よりも細胞増殖および細胞生存能力を亢進させる傾向にあることが明らかになった。さらにXタンパクに対するリガンドで刺激を行った場合に、野生株とは異なり、変異体発現株はいずれもXシグナル伝達経路を亢進しない可能性がルシフェラーゼアッセイの結果から示された。さらに、野生株と変異株それぞれに対して、肺動脈平滑筋細胞の増殖に大きく関与することが既にあきらかになっているBMP4、もしくはXタンパクに対するリガンドを加えてBMPシグナル伝達経路に対する影響をルシフェラーゼアッセイで確認した。その結果、野生株と変異株の間で有意な相違はみられなかったが、BMP4刺激もしくはXタンパクに対するリガンドによる刺激の存在下で、XはBMPシグナル伝達経路の活性を低下させることがあきらかになった。
すべて 2014
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Mol Genet Genomic Med.
巻: 2 ページ: 229 239
10.1002/mgg3.58.