研究課題/領域番号 |
24591589
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研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
伊藤 正恵 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (10201328)
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キーワード | 麻疹ウイルス / SSPEウイルス / 細胞融合 / 神経病原性 |
研究概要 |
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は、麻疹罹患後数年以上の潜伏期間を経て発症し、この持続感染の間、元の麻疹ウイルス(MeV)は変異を蓄積してSSPEウイルスへと変貌する。その変異過程を解析し発症機構を解明する目的で、SSPE発症6週間後の5歳患児から分離したSSPEウイルス(SSPE-Kobe-1株)について、46の全アミノ酸変異の特徴付けを行っている。本年度は、(1)融合を担うFタンパク質について昨年度に引き続き解析し、Hタンパク質との相互作用領域、三量体形成界面、cytoplasmic領域の変異が蛋白分子の不安定性を誘導し、細胞融合活性を亢進させることを明らかにした。また、(2)レセプター結合Hタンパク質では、CD46をレセプターとして使用するための変異を持たないことを示した一方で、head領域に細胞融合活性を飛躍的に上昇させる変異を確認した。Hタンパク質は、細胞融合能ならびに感染性粒子形成能に単独では直接影響しなかったが、Fタンパク質によるこれらの亢進と抑制を増強させた。さらに、(3)マウス感染実験から、神経病原性の発現に、Fタンパク質のみならず、HおよびMタンパク質を必要とすることを見出した。SSPEウイルスでは、例外なくMタンパク質に変異が集中するにもかかわらず、最近になり、神経病原性はFタンパク質の変異のみで発揮されると報告されているが、あらためてMタンパク質の変異の役割について検討する必要性を示唆する結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MeV Ich-B株の各蛋白にKobe-1株に認められるアミノ酸変異を順次導入し、アミノ酸変異の特徴を把握するという目標は、Fタンパク質に続いてHタンパク質について完了した。また、組換えウイルスの作製と増殖様式の検討を開始し、平成25年度以降の予定であった神経病原性の発現に必要な変異蛋白を同定することができた。しかし一方で、他のウイルス蛋白の変異については、解析の途中であるため、(2)の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究を続けるとともに、M、FおよびHタンパク質のそれぞれの変異を単独であるいは複数持つ組換え麻疹ウイルスを作製してその性状解析を行い、神経細胞あるいはマウスにおけるウイルス増殖への影響の検討に着手する。(1)持続感染ウイルスを作製して増殖様式を調べる、(2)遊離粒子形成能を欠失させる変異、持続感染成立のための変異を同定する、(3)ウイルス増殖を飛躍的に上昇させる変異を同定し、マウス神経病原性を確認する、ことによりKobe-1株がSSPEウイルスへと変化した過程を分子レベルで明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に計画した、免疫染色にも利用できる特異性に優れたFおよびHタンパク質に対する抗体の作製が予定より遅れた。 上記抗体作製を実行するとともに、本年度配分の経費は、主に、研究を計画通り遂行するために必要な、細胞培養用試薬、遺伝子研究用試薬、プラスチック製品や実験動物などの物品費に使用する。
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