麻疹ウイルスから亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis: SSPE)ウイルスへの変異過程の分析を基に発症機構を解明する目的で、SSPE発症6週間後の5歳患児から分離したSSPEウイルスKobe-1株について解析した。神経病原性の発現にはウイルスの細胞融合能の亢進が深く関わり、そのためFおよびM蛋白質の変異が必須であった。またH蛋白質の変異はこれを促進した。FおよびH蛋白質上には、逆にウイルスの細胞融合能を抑制して増殖を制限する変異が見出され、これらの変異は麻疹ウイルスが神経病原性を獲得するまで患者体内で潜伏感染することに関連すると考えられる。
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