研究課題
アシクロビル(acyclovir,ACV)は,単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)感染症に有効な薬剤である.2012年度は世界で初めてウイルス学的にACVに耐性のHSV-1による新生児ヘルペス(脳炎)の患者について報告した(JCM, 2013).2013年度はDNAポリメラーゼ(DNApol)関連ACV耐性HSV-1の特徴(病原性,他薬剤への感受性,治療法のあり方等)について解析した(JJID, 2013).2014年度は臓器移植患者から分離されたACV耐性HSV-1の分子生物学的特徴を解析し,ACV耐性HSV-1感染症の治療のあり方について考察した.造血幹細胞移植を受けた268人の患者のうち,40人の咽頭スワブから101株のHSV-1が分離された.その11人からACV耐性HSV-1が分離され,6人および5人から,それぞれウイルス性リン酸化酵素(vTK)関連ACV耐性株およびDNApol関連HSV-1が分離された.ACV耐性株陽性患者およびHSV-1が分離されなかった患者のの100日生存率はそれえぞれ約40%と70%であった.DNApol関連HSV-1の多くはフォスカルネットに交差耐性を示し,逆にガンシクロビルに感受性を示した.vTK関連HSV-1の多くはフォスカルネットに感受性を示し,シドフォビルには感受性が高まっていた.分離されたACV耐性HSV-1のvTKおよびDNApol遺伝子を決定し,これまでの報告に加えて遺伝子情報をアップデートした.これまでの報告ではACV耐性HSV-1の約95%はvTK関連耐性株で,残る5%がDNApol関連HSV-1であるとされている.しかし,現実にはDNApol関連HSV-1が免疫不全患者において比較的高い割合で出現する.ACV耐性HSV-1感染症に対する治療において抗ウイルス薬の選択において緻密な選択戦略が必要であると考えられる.
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臨床神経学
巻: 54 ページ: 1024-1027