研究課題
[背景] 乳児特発性僧帽弁腱索断裂とは、生来健全な乳児に突然の急性呼吸循環不全が発症し、診断と早期の外科治療が遅れると死に至る疾患である。ほとんどが日本人で、生後4-6ヶ月に発症が集中する。基礎疾患として川崎病、抗SSA抗体、ウイルス心内膜炎等などが示唆されるが詳細は不明である。その病因および臨床経過および臨床検査所見を詳細に調査し、本疾患の早期診断および的確な内科的および外科的治療法を早急に確立する。[対象と方法] 発症年齢、基礎疾患の有無、発症様式、血液生化学所見、画像所見、手術所見、病理組織所見、予後、転帰などについて調査。サンプルが得られた症例では、全血および血清サンプルの凍結保存、尿、弁、咽頭拭い液からのウイルス分離、弁置換を行った症例では弁組織の凍結保存やホルマリン固定病理組織標本の免疫組織科学的検討を行い、腱索断裂のメカニズムを解明研究する。[結果] 過去16年間に発症した95例について臨床所見を要約。発症は生後4〜6ヶ月に集中し(85%)、やや男児に多く(53:42)、春から夏の頻度が高かった(66%)。全体的に近年増加傾向にある。基礎疾患として、川崎病10例、抗SSA抗体陽性2例、細菌性心内膜炎1例が認められた。CRPの上昇は軽度で、外科治療は弁形成が52例(55%)、人工弁置換が26例(27%)に行われた。死亡例は8例(8.4%)で、中枢神経系後遺症は10例(11%)認められた。これらの結果は、Circulation. 2014;130:1053-1061に論文として掲載された。また、本年度は血液からウイルスが分離された症例はなく、凍結された弁および腱索組織が得られなかったにで、来年度以降にこれらの検索を押し進め、病因解明と治療法の確立に役立てる。[結論]今回の研究で病因および病態がある程度推測可能になったので、今後研究を継続して、早期発見および的確な治療法を早急に確立する。また基礎研究と疫学調査を継続して行い、病因解明に向けた努力を行う。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
Circulation
巻: 130 ページ: 1053-1061
10.1161/CIRCULATIONAHA.114.008592
小児疾患診療のための病態生理1. 改訂第5版, 小児内科
巻: 46 ページ: 259-262
小児科診療 2014年増刊号 小児の治療指針
巻: 77 ページ: 353-354