研究課題
基盤研究(C)
目的:遺伝子ノックアウトマウスを用いた、ポリコーム(PcG)遺伝子Rae28/Phc1、Pcgf5の機能解析を元に、心臓前駆細胞の分化・成熟過程に重要な、細胞増殖・分化の転換機構解明を目指し、更に、この転換機構の破綻がヒト先天性心疾患を生じさせ、PcG 遺伝子がその原因遺伝子である可能性について探索する。研究実績:1. Rae28/Phc1遺伝子KOマウスの解析:二次心臓領域における心臓前駆細胞の増殖・分化に重要な働きを示す事が分かっている幾つかの遺伝子について、in situ hybridization法を行った。その結果、Bmp4、Fgf10の発現が大きく変化していた。2. Pcgf5遺伝子KOマウスの解析:個体レベルでPcgf5の機能解析を行うために、Pcgf5遺伝子KOマウスのヘテロ個体同士を交配し、ホモ個体を作出した。得られたホモ個体に大きな異常は確認されず、交配能力も維持されていた。3. 免疫沈降法を用いたPcgf5タンパク質と複合体を形成するタンパク質の探索:胎令9.5日、12.5日の心臓及びその周辺領域からタンパク質を抽出し、既に作製したPcgf5タンパク質、及び他のPcGタンパク質に対する抗体を用いて免疫沈降を行った。その結果、Pcgf5はPcG複合体(PRC1)の内、既知のCbx-PRC1の構成要素であるばかりでなく、最近明らかになったRybp-PRC1の構成要素でもある事が明らかになった。
3: やや遅れている
Pcgf5遺伝子KOマウスを作製し、そのホモ個体において心臓発生に異常が生じると予想したが、実際にはホモ個体に大きな異常を確認できなかった。その他の計画ついてはおおむね順調に進展している。
1. Pcgf5遺伝子KOマウスの解析について:Pcgf5遺伝子KOマウスはホモ個体において大きな異常が確認されていないため、Pcgf5と同じファミリーを形成する他のPcgfタンパク質が補完している可能性がある。Pcgf5遺伝子KOマウスのホモ個体からタンパク質を抽出し、他のPcgfタンパク質が補完しているかどうかを免疫沈降法を用いて解析し、補完が確認されたPcgfタンパク質のKOマウスが既に作製されていれば、そのマウスとPcgf5遺伝子KOマウスを交配してDouble KOマウスを作製する。2. Rae28/Phc1遺伝子KOマウスの解析:前年度に引き続き、KOマウスの解析を行う。3. クロマチン免疫沈降(ChIP)法を用いたRae28/Phc1タンパク質、Pcgf5タンパク質標的遺伝子の探索:Pcgf5に対する抗体、Rae28/Phc1に対する抗体を用いて、発生中の心臓及び二次心臓領域からサンプルを抽出し 、ChIP解析法を用いてRae28/Phc1、Pcgf5それぞれの標的遺伝子を同定する。4. 免疫沈降法を用いたPcgf5タンパク質と複合体を形成するタンパク質の探索:前年度に引き続き、Pcgf5 タンパク質と結合するタンパク質の同定に努めるとともに、同定された複合体が、 ChIP 解析法で同定された標的遺伝子の発現を変化させるかどうかを、培養細胞に遺伝子導入して確かめる。
1. Rae28/Phc1遺伝子、Pcgf5遺伝子KOマウスの解析:Pcgf5遺伝子KOマウスに大きな異常を確認できなかったため、一部実験を遂行できず研究費の残額が生じたが、補完する遺伝子とのDouble KOマウス作成後に予定していた実験を遂行する。Rae28/Phc1遺伝子KOマウスは前年度に引き続き解析する。マウスの解析時に使用する試薬の購入に研究費を使用する。2. クロマチン免疫沈降(ChIP)法を用いたRae28/Phc1タンパク質、Pcgf5タンパク質標的遺伝子の探索:ChIPを行うための抗体、試薬の購入に使用する。3. 免疫沈降法を用いたPcgf5タンパク質と複合体を形成するタンパク質の探索:前年度に引き続き、Pcgf5 タンパク質と結合するタンパク質の同定に努める。本解析に使用する抗体の購入、各試薬の購入に使用する。
すべて 2013 2012
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Mol Cell Biol
巻: 33 ページ: 644-660
DOI:10.1128/MCB.00974-12