研究概要 |
昨年度は、過去の報告から胎盤 における 11βHSD2 活 性として臍帯血コルチゾール/コルチゾン比(F/E比)を用いて胎児発育を評価した。その結果、SGA児は有意にF/E比が高く胎盤11βHSD2活性が低いことが示唆され、母体コルチゾールの影響を受やすいことが示唆された。 今年度は30人の新生児を対象に、胎盤11βHSD2活性と胎児発育との関係をAGAとSGA児の二群で検討した。胎盤11βHSD2活性は胎盤全層からmRNAを抽出しリアルタイムPCRで測定したHSD11B2遺伝子発現で評価した。また、対象のうち22人で出生直後の尿中コルチゾン/コルチゾール代謝物比((alloTHF+THF)/THE)を測定し、胎盤11βHSD2活性の指標になり得るかを評価した。 30人中SGA児は11人であった。また、尿検体を得られたのは22人中SGAは7人であった。それぞれ両群で在胎期間、性別などの背景に有意差を認めなかった。胎盤HSD11B2遺伝子発現はSGA児で有意に低く(AGA:1.35±0.99, SGA:0.42±0.16, p=0.02)、尿中(alloTHF+THF)/THE比はSGA児で有意に高かった(AGA:0.19±0.14, SGA:0.49±0.19, p<0.001)。しかし、両者には相関を認めず(p=0.8)、生直後の尿中コルチゾン/コルチゾール代謝物比は胎盤11βHSD2活性の指標とはなり得ず、胎児11βHSD2活性を反映すると考えられた。 したがって、本結果からSGA児では胎盤と胎児の両者で11βHSD2作用低下し胎児発育に抑制的に働いており、本酵素により胎盤のみならず胎児組織のレベルでも胎児はグルココルチコイド暴露から守られていることが示唆された。
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