研究課題/領域番号 |
24591597
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松田 直 東北大学, 大学病院, 准教授 (50361100)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脳室周囲白質軟化 / 胎児 / オリゴデンドログリア / 髄鞘化 / MRI / 電子顕微鏡 / 免疫染色 / ヒツジ |
研究概要 |
本研究では,胎生期脳白質損傷では皮質下白質に希突起膠細胞 (OL) 系に過成熟が誘導されるため,そのprogenitorやprecursorは減少するが成熟OLは逆に一過性に増加する,という仮説を検証する.従来の仮説では成熟OLは増加せず髄鞘化が大幅に遅れるとされているからである. H24年度はヒツジ胎仔の慢性実験系で脳白質損傷を誘導した後,脳MRI撮影,脳組織の電顕撮影と免疫染色する実験を8回予定した.しかし,昨夏の記録的な猛暑によって牧場のヒツジに交配失敗や流産が続出したため,得られたデータはMRI撮影4例と電顕観察2例に留まった.また,限られたヒツジ胎仔数で効率よく実験したため,MRI撮影の4例ではいずれも「炎症+低酸素」負荷ではなく,「人工胎盤+低血圧」負荷で脳白質損傷を誘導した.なお,脳MRI撮影後の灌流固定では電顕観察条件が悪くなるため,来期からは双胎妊娠を用いることとなった. MRI撮影できた4例中1例に脳白質損傷はなく,残る3例すべてに組織学的に巣状脳白質損傷 (PVL) が両側性多発性に深部白質に認められた.3例中1例では脳実質内出血を合併した. MRI画像にて,組織学的に脳白質損傷が認められなかった1例では側脳室周囲深部白質に「巣状T1高T2低信号」が観察された.組織学的にPVLが認められた3例ではPVL病変に一致して「T1高T2低信号」が,脳実質内出血では「T1高T2低信号」でその周囲には逆コントラストが認められた. 電顕撮影に供した2例ではいずれも多巣性PVLに加えて両側多発小出血壊死が誘導され,現在鳥取大で観察し写真撮影中である.免疫染色は標準的な冠状4断面で行い,巣状およびびまん性脳白質損傷の3次元マップを作成する.これらに基づいて脳白質損傷で髄鞘化が一過性に促進するかどうかを解析する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1) 昨夏の記録的な猛暑によって牧場のヒツジに交配失敗や流産が続出したため (2) 帝王切開後に胎仔脳MRIを撮影してからでは,時間が経ちすぎて灌流固定が悪くなり,電顕観察条件が悪くなるため
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今後の研究の推進方策 |
(1) ヒツジ納品の2ヶ月前に牧場でヒツジの妊娠鑑定を行い,納品時には再度の胎仔超音波検査を行って,子宮内で胎仔が順調に発育していることを事前に確認する.また,牧場に対しては,1実験に対して妊娠ヒツジを2頭準備させて体調の良い方のヒツジを実験に供する. (2) 実験には双胎ヒツジを用いて両方の胎仔に同じ負荷を加え,一方を脳MRI撮影に供し,他方を電子顕微鏡撮影に供する.
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度は牧場のヒツジに交配失敗や流産が続出したためヒツジ購入代金が余った.この余った研究費はH25年度の実験のヒツジ購入代金に上乗せし,実験回数を予定の8回から12回に増やす.
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