本研究では,胎生期の脳白質損傷では病巣周囲にオリゴデンドログリア系に前駆細胞の枯渇と成熟細胞への過成熟が誘導されるという仮説を検証するために,ヒツジ胎仔の脳白質損傷モデルを用いて免疫組織染色によるオリゴデンドログリア系の発達段階別の分布密度解析,電子顕微鏡による髄鞘化の分布と巻数解析,およびMRI異常信号の分布解析を行う. 平成26年度は妊娠91-97日のヒツジ胎仔を用いて慢性実験系を作成し (炎症群4例,sham群5例),炎症群の3例とsham群の3例に「人工胎盤+低血圧負荷」による脳白質損傷を誘導させ,MRI画像ならびに組織切片を採取することができた.しかし,いずれも単胎妊娠であったため今年度も電子顕微鏡撮影はできなかった (電子顕微鏡用の組織固定とMRI撮影を同時には行えないため). 巣状脳白質損傷はいずれもMRIにてT1強調画像でhigh intensity,T2強調画像でlow intensityに描出され,病巣周囲はT2強調画像でときにhigh intensityを示した.この周辺病変がびまん性脳白質損傷の特徴的異常信号を推察された.この部位が「オリゴデンドログリア系に前駆細胞の枯渇と成熟細胞への過成熟」像を示すかどうかを引き続き免疫染色で確認しする. 現時点では解析に必要とされる組織切片,MRI画像,電子顕微鏡画像はすでに得られているが,免疫染色,MRI,電顕それぞれの画像を数値化する処理が終了していない.今春中にこれらを済ませて上記仮説の検証を行う予定である.
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