研究課題/領域番号 |
24591599
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
堀米 仁志 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50241823)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 先天性QT延長症候群 / 胎児心磁図 / 遺伝子検査 / 致死性不整脈 / イオンチャネル / チャネル機能解析 / 胎児徐脈 |
研究概要 |
(1)症例の全国調査:胎児新生児期に発症する遺伝性不整脈症例の全国調査を継続している。登録数は小児循環器科医が所属する病院を中心に、45施設から61症例となった。その約55%で遺伝子変異が判明し、遺伝子型と臨床的表現型の解析を進めている。 (2)登録症例の臨床像の検討:海外の症例と合わせた検討により、先天性QT症候群の胎児は各在胎週数において、正常胎児と比較し有意に徐脈傾向(特に正常児の<3パーセンタイル)にあることがわかった(Mitchell, Cuneo, Etheridge, Horigome, et al. Circulation 2012)。同症候群の早期発見のための重要な表現型と考えられた。 (3)新しい心電図波形解析によるLQTSの診断:独立成分分析によるLQTSのT波成分解析を行い、LQT1診断の精度が主成分分析より高いことを示した。 (4)遺伝子検査:①家族および施設倫理委員会の承諾を得た上で、先天性QT延長症候群家系(本人、第一子が罹患者)の第二子となる胎児に対して心磁図による同疾患のスクリーニングを行った。先天性QT延長症候群は新生児期・乳児早期に致死的な不整脈を来すことがある。家族歴や胎児スクリーニングで同疾患が疑われる場合、非侵襲的な出生前診断を行い、疾患に合わせた胎児治療や出生後早期の対応を行うことにより、致死性不整脈による新生児死亡を減らすことができる。②文献上まだ報告されていないQT延長症候群関連遺伝子の変異がチャンネル機能に与える影響、すなわち病的変異かどうかを調べるため、パッチクランプ法を用いてイオンチャンネル機能解析を行う計画を進めている。現在までに野生型遺伝子を培養細胞に遺伝子導入し、イオンチャンネルを発現させた。今後、変異遺伝子で発現させたイオンチャンネルの機能を野生型と比較、解析をすすめていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胎児・新生児期に発症する遺伝性不整脈の遺伝的背景と臨床的表現型を解析するには、十分な症例数とデータの蓄積が不可欠であるが、前述の通り、現在まで十分な症例登録があり、遺伝子変異の検出率も上昇しているため、解析が可能となっている。また、イオンチャネル機能解析システムの準備も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 胎児・新生児期に発症する遺伝性不整脈症例の全国調査を継続し、十分な症例数を蓄積する。(2)登録症例の臨床像の検討、特に長期経過と生命予後について情報を再収集する必要がある。(3)独立成分分析を用いた心電図波形解析によるLQTSの診断精度を高め、遺伝子変異の種類との相関を検討して行く。(4)現在までに登録された症例のなかに、遺伝子変異が同定されていないものが相当数に上るため、十分な説明と同意のもとに、遺伝子検査への協力を求め、さらに最新の遺伝子解析技術を導入して診断率を上げていく。 以上の結果をもとに、新たな先天性QT延長症候群の診断・治療アルゴリズムを作成する。胎児・新生児期に発症する遺伝性不整脈のホームページを開設し、国内の診断・治療体制を構築することを目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
①遺伝子検査を行うためのDNA抽出キットやPCR、シークエンスキット、イオンチャネル機能解析用の消耗品など 約600,000円 ②国内調査研究打ち合わせ、成果発表旅費 250,000円、米国での成果発表旅費 250,000円、研究補助のための人件費 300,000円、ホームページ開設費用、印刷費用など 300,000円
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