スフィンゴシンキナーゼ遺伝子改変マウスでは、妊娠中、好中球遊走因子であるCXCL1やCXCL2の発現が、胎児ー母親組織境界領域で著明に増加していた。その結果、好中球が同領域に異常に浸潤して組織障害が起こり、胎児が妊娠早期に死亡した。好中球浸潤を阻害する薬をマウスに投与すると、流産の発症率は減少した。ヒトの脱落膜細胞にスフィンゴシンキナーゼの阻害剤を投与すると、CXCL1やIL-8などの好中球遊走因子の分泌が増加した。以上より、スフィンゴ脂質代謝は自然免疫系を制御することにより、母児免疫寛容に重要な役割を果たしており、我々の成果は、ヒトの原因不明の不育症の治療法開発に有用であると考える。
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