研究課題
新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)は、周産期における胎児および新生児の脳の低酸素虚血状態によって生じ、脳性麻痺、精神発達遅滞、てんかん、学習障害など重篤な影響を及ぼす。近年、脳梗塞モデルにおいて誘導型シクロオキシゲナーゼであるCOX-2阻害により梗塞巣の縮小が報告されている。そこで本研究においてはプロスタグランジン受容体作動薬の脳保護作用について研究を行っている。これまでの研究により、EP2-4アゴニストであるミソプロストールが新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)ラットモデルにおいて梗塞病変を縮小させることが分かった。その脳保護作用の具体的な作用について理解を進めるために、in vitroにおける解析を加えた。胎児・新生児期における作用を知るためには、幼弱な神経前駆細胞を用いる必要があるだろう。しかしながらヒト神経幹細胞・神経前駆細胞を手に入れるのは容易でない。そこでヒトiPS細胞から神経系への分化誘導系の確立をまず行った。健常児の臍帯血から樹立したヒトiPS細胞について、SMADシグナリングの二重阻害を行うことで効率的な神経分化誘導が可能となる。これによって形成されたロゼットを複数回単離することで、純度の高い神経前駆細胞群を得ることが可能となった。これらを低酸素状態・無グルコース状態において障害を加え、そしてさらにミソプロストールを添加することでその効果を評価することができた。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Cell Reports
巻: 15 ページ: 1-14
http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.04.031