本研究は、発達期の摂食リズムが仔の概日リズムや概日リズム調節機構の発達および身体発達にどのような影響を与えるかについて検討することを目的として行われた。平成26年度は、これまで本研究で明らかにした、明暗周期下の暗期 (D群)、又は明期だけ(L群)に母獣同居した場合は、D群で体重増加が抑制されること、明暗周期下で母獣同居リズム(哺乳リズム)を反転させても行動リズムは反転しないこと、さらに恒常明下では一過性体温低下は母獣同居リズム(哺乳リズム)のタイミングに同調するようになり、母子分離実験前のフリーランリズムをリセットする同調因子となること、という成果を踏まえ、恒常明下での母仔同居タイミングの違いによる仔の体重増加および行動リズムの違いを検討し、明暗周期下で行う母仔分離の場合と比較した。恒常明で飼育中の母獣および仔を、生後7日目から(この時点での)主観的活動期(CT12-24群)又は休息期(CT0-12群)のみに母獣同居させるようにし、生後21日まで飼育した。母獣との同居時間を制限している期間の仔の体重変化はCT12-24群とCT0-12群ともの大きな違いがなく、両群とも無処置群(恒常明下で飼育し、母獣との同居制限なし)と比較して体重増加が抑制されており、離乳直前(生後21日齢)での体重はCT12-24群で対照群の約77%、CT0-12群は対照群の約78%であった。また、平成25年度に既に報告した通り、恒常明下では深部体温リズムは母獣同居リズム(哺乳リズム)に同調すると考えられるが、今回、仔の活動リズムも同様に母獣同居リズム(哺乳リズム)に同調していることが明らかになった。このことは明暗周期下での母獣同居制限した場合と大きく異なる点であり、哺乳期ラットにおいても母仔同居リズムよりも明暗周期が概日リズムのより強力な同調因子となっており、明暗周期が仔の摂食・代謝の制御に重要な役割を果たしていると考えられた。
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