研究課題/領域番号 |
24591603
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
太田 健一 香川大学, 医学部, 助教 (50403720)
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研究分担者 |
竹内 義喜 香川大学, 医学部, 教授 (20116619)
三木 崇範 香川大学, 医学部, 准教授 (30274294)
鈴木 辰吾 香川大学, 医学部, 助教 (50451430)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 母子分離 / 学習障害 / 脳発達臨界期 / CaMKII / AMPA受容体 |
研究概要 |
Sprague-Dawleyラットの仔を個別に母獣から分離し(生後2-20日: 6h/日)、母子分離モデルを作製した。まず成熟後の曝露動物を用いて記憶・学習能を解析した所、Shuttle box testのような明確な条件付けのある学習試験では正常群との間に差は認められなかったが、Radial maze testのような空間的かつ文脈的な記憶が必要な試験では長期記憶を意味する参照記憶に関する成績が著しく低いという結果が得られた。加えて30日後に再び同試験を行う想起試験においても曝露群の成績が低い事が示された。このような結果をうけて、長期記憶形成に重要な役割を担う海馬に着目し、神経回路網形成に重要な役割を担い脳発達臨界期に特徴的な動態を示すAMPA受容体のサブユニット:GluR1を母子曝露期間中から成熟後までwestern blotにて経日的に解析した。各日齢での曝露動物のGluR1発現量は正常群と比較して有意な差は認められなかったが、生後10日におけるGluR1リン酸化は有意に亢進していた。また更にGluR1のリン酸化制御に関連するCaMKIIのリン酸化も同様に、生後10日で有意に亢進していることが見出された。 げっ歯類において生後10日齢付近の過剰なGluR1リン酸化は、例えそれが一過性であったとしても成熟後の学習能に影響を及ぼす事が報告されており、これはラットにおける生後10日付近でのAMPA受容体動態は成熟後の行動にまで影響を及ぼす重要な因子である事を示す。それ故、本研究で認められた母子分離曝露動物の記憶・学習障害は、脳発達臨界期における海馬のCaMKIIおよびGluR1の過剰なリン酸化が一部起因していると考えられる
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究目的は、幼若期の不遇な養育環境が成熟後の学習障害及び精神神経疾患を引き起こす機序を解明する事である。初年度である平成24年度はまず学習障害に着目し、2種類の性質の異なる学習試験 (shuttle box test, radial maze test)を行い、母子分離モデル動物における学習障害を詳細に解析する事ができている。加えてradial maze testを行った動物群の脳は既に採取しており、現在は次年度に向けて海馬歯状回における神経細胞新生がどのように学習障害に関与しているのかを解析している段階であり当初の研究計画よりも詳細な解析を目指している。加えてこのような神経細胞新生との関連性が指摘されている精神疾患である抑うつを解析するためのシステムも準備が完了しており、平成25年度に円滑に解析を行える予定である。 また、発達期における母子分離が成熟後まで影響を及ぼす要因として、神経回路網形成に重要な役割を担うAMPA受容体およびCaMKIIの脳発達臨界期での異常亢進を見出した。これは今回認められた学習障害等の行動異常が引き起こされる機序を脳発達期から解明する糸口になるものであり、本研究課題の目的を補佐する結果となるものである。 これらの結果を総合的に考えると、研究の進展具合は順調であり十分な成果が得られていると判断できるものである。
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今後の研究の推進方策 |
動物作製は前年度と同様に行い、Sprague-Dawleyラットを用いて母子分離曝露動物を作製する。この曝露動物を用いて、前年度に認められた学習障害の機序を調べるため、既に採取した脳を用いて海馬における神経細胞新生を詳細に解析する。具体的には学習試験前と試験後における海馬歯状回の神経細胞新生をBrdU, NeuN抗体を用いた蛍光二重染色にてカウントし、学習試験による神経可塑性を母子分離群と正常群で評価・比較する。また曝露群では同一試験で獲得された記憶想起時の成績低下も認められているため、Zif286抗体を上記のBrdU, NeuN抗体と組み合わせて染色する事で新生された神経細胞が記憶想起に活性化し使われているか否かを両群で比較し、新生細胞の機能的な側面での解析も行う。歯状回における神経細胞の新生は、長期記憶である参照記憶との関連が指摘されている事からも母子分離曝露動物の学習障害機序解明の一助となると考えられる。 加えて上記のような神経可塑性との関与が示唆されている抑うつに関して、前年度設置し予備実験を行った抑うつ解析システムを用いて評価する。評価方法は強制水泳試験を用い、水を入れた円筒形のシリンダーにラットを入れ、各解析項目を専用ソフトウェアにて測定する。1) immobile、2) floating、3) strugglingを中心とした全7項目を評価し、抑うつ状態を網羅的に評価することで母子分離曝露動物のストレス脆弱性による精神神経疾患発症リスクを検討する。 上記解析を通して、25年度は26年度における詳細解析に向けて母子分離曝露動物の学習障害及び抑うつ等の精神神経疾患の発症機序を海馬歯状回における神経可塑性の異常という神経回路網レベルで解明することを目指す予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当無し
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