研究課題
拡散テンソル画像(diffusion tensor imaging; DTI)は比較的新しいMRIの技術で、通常のMRIでは検出できないような微細な脳障害、特に白質の障害を評価するのに有用な手法である。早産児に合併しやすい脳室内出血は白質障害をきたし、発達に影響することが知られているが、軽微な脳出血については白質障害をきたすかどうかについては一定の見解はない。DTIを用い、脳の諸領域の拡散パラメーターを算出し、軽微な脳室内出血のある例と脳室内出血のない在胎30週未満の早産児を対象例として比較し、MRIの拡散強調画像のデータを解析した。画像解析ソフトPRIDE(Philips社)を使用し、以下の報告の方法で、白質路を描いた(Murakami et al. Pediatrics 2008, Stieltjes et al. Neuroimage 2001)。運動路、感覚路については関心領域を大脳皮質、内包、橋のそれぞれ解剖学的に運動路、知覚路が走行していると考えられる部位に一定の大きさで設定した。また、小脳脚については、上小脳脚は中脳背内側部と歯状核に、中小脳脚は中小脳脚と小脳半球に関心領域を設置して白質路を描出した。描出された各白質路における拡散パラメーター (FA, ADC)を算出した。上小脳脚のおいて軽微な脳室内出血のある例では、ない例に比較して有意に低いFAを示した。特に在胎週数がより早期な群(在胎26週未満)においては、軽微な脳室内出血のある例では、ない例に比較して有意に低いFAが上小脳脚、運動路において、有意に高いADCが中小脳脚において認めた。以上のことから、軽微な脳室内出血は、特により在胎週数の若い早産児において白質路の拡散パラメーターに影響を与えると考えられた。
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Neuroradiology
巻: 57 ページ: 507-514
10.1007/s00234-015-1487-7