研究課題/領域番号 |
24591610
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
飛彈 麻里子 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (20276306)
|
研究分担者 |
粟津 緑 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20129315)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 胎内プログラミング / 子宮内胎児発育遅滞 / 腎機能障害 / 生活習慣病 |
研究概要 |
本研究の目的は、子宮内劣悪環境による腎疾患胎内プログラミングを超低出生体重児(以下ELBW児)の尿細管・間質障害に着目し評価・解明することである。尿細管障害は糸球体障害に先行し、腎障害の早期発見対応に繋がる診療指標となる可能性がある。生後7か月以上のELBW児52名(男:女は30:22)を検討、検体採取時の歴年齢中央値2歳0か月。在胎週数平均値26.5週、出生体重平均値726 g 。尿細管機能は、尿中Ca/Cr (7-12か月>0.8、1-3歳>0.53、3-5歳>0.4、5-7歳>0.3、>7歳>0.2) 、NAG/Cr (>5 U/g) 、β2ミクログロブリン(β2m) (>200 mcg/L) 、glucose/Cr(glu/Cr) (>100 mg/g)を、糸球体障害の指標としてミクロアルブミン (alb/Cr)>30 mg/gを異常とした。82.6% に尿細管異常を、25.5% にアルブミン尿を認めた。尿細管異常の内訳はCa/Cr高値37.2% 、NAG/Cr高値71.7% 、β2m高値30.4%、glu/Cr高値91.3%。超音波で34.6%に腎石灰化を認めた。在胎週数の平均値はβ2m高値群では25.2週(正常群27.0週)、alb/Cr高値群では24.8週(正常群26.8週)と有意に短縮、またβ2m値は出生体重、在胎週数と有意に相関した。いずれの尿細管異常もalb/Crとは相関を示さなかった。LBW児に尿細管障害が高頻度にみられることが明らかになった。尿細管異常はアルブミン尿と相関せず、糸球体障害による二次性の障害ではなく、胎内、周生期の異常による一次的な障害であることが示唆され、一部の尿細管障害(β2m)は出生体重との関連がみられた。さらにIUGR、EUGR、仮死、慢性肺疾患、ステロイド・抗菌薬投与、新生児期における腎不全の有無との関連を検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は基礎的アプローチとして母体低栄養、ステロイド投与モデルラットを用いてトランスポーターの発現、尿細管・間質病変を検討することになっていたが、こちらはまだ有意な結果が得られていない。免疫組織染色、ウエスタンブロットに使用している抗体のクオリテイなど実験手法的に問題がある可能性も考えられ、本年は専門業者とさらに条件の設定を検討することにしている。またベースラインではモデル動物と対照群との間に有意な変化が得られない可能性もあり、もともと平成25年度に予定していたように、虚血などの負荷に対する反応性の大きさで有意差の有無を検討していく。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降は上記モデルに片側尿管結紮または虚血再環流という負荷をかけ、経時的変化を観察することを計画している。ベースラインとして対照群と有意差が出なかった場合でも、更に負荷をかけたときの反応の大きさに有意差が顕在化することが期待される。実験手法については本研究費の申請時に申請計画書に記載したとおりである。平成24年度と同様に作成したモデル動物に片側尿管結紮、または左腎動脈30分間クランプを行う。その後の腎機能、病理組織の検討を行う。 さらに疾患モデルと対照群で臨床的な所見に有意差が得られた場合には遺伝子メチレーションの網羅的解析を実施し、表現型差の原因となる遺伝子を明らかにすることを計画している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、円高の影響もあり国際学会参加費が予定より低額に抑えられたことと、効率的に消耗品などの購入を実施できたので未使用額が発生した。繰越金については、平成24年度に有意な結果が得られなかったトランスポーターの発現、尿細管・間質病変の検討について、専門業者への依頼を検討しており、そちらへの支払いに充てる予定である。また円安になることから国際学会への参加費は本年度より必要額が上がることが予想される。平成25年度は新しく機器を購入することは計画していない。前述したように、専門業者に実験の一部を委託し、研究を効率良く進めていくことを計画している。業者への支払いは数十万単位になることが予想され、予算の大部分が実験を委託する業者とモデル動物作成代に充てることになると考えられる。
|