研究課題/領域番号 |
24591610
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
飛彈 麻里子 慶應義塾大学, 医学部, 共同研究員 (20276306)
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研究分担者 |
粟津 緑 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20129315)
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キーワード | 胎内プログラミング / 子宮内胎児発育遅滞 / 腎機能障害 / 生活習慣病 / 尿細管障害 |
研究概要 |
本研究の目的は、子宮内劣悪環境による腎疾患胎内プログラミングを超低出生体重児(以下ELBW児)の尿細管・間質障害に着目し、評価・解明することである。尿細管障害は糸球体障害に先行し、腎疾患の早期発見対応に繋がる診療指標となる可能性がある。昨年度迄の検証では、ELBW児に尿細管障害が82.6%と高頻度に認められることが明らかになった。今年度さらに症例を追加して検討し、各マーカーが在胎週数と強く相関し、出生体重とはほぼ相関しないことが明らかになった。腎機能に影響を与えると考えられる他の臨床経過の項目では統計学的に有意な関連は確認できず、出生時の腎の未熟性がその後の腎機能成熟にも影響を与えていると考えられた。 また母体低栄養ラットモデルを用い、胎仔腎DNAメチル化への影響を網羅的に検討した。母体低栄養(NR、胎生1日より対照の50%に飼料を制限)および対照ラットの胎生18日後腎のDNAメチル化をMeDIP法、NimbleGen Rat ChiP-chip 385K Promoter arrayを用い検討した。尿管芽は胎生13、14、15、18日の胎仔腎をpancytokeratin染色で評価した。糸球体数は生後3週のラット腎をacid maceration法により評価した。NRの胎生13-15日の尿管芽分岐は対照に比し50%、生後3週の糸球体数は20%減少していた。15911のプロモーター領域のうち7330領域がNRでのみメチル化されていた。メチル化が増加した領域の遺伝子のほとんどは腎発生、尿細管分枝に関与しており、シグナル伝達、転写、トランスポート、アポトーシス、発生等の機能を有するものであった。母体低栄養により尿管芽分岐に関与する遺伝子のDNAメチル化が変化し、ネフロン数減少、および継世代的伝達に関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は、当初の計画では虚血などの負荷に対する反応性を検討する予定であったが、実施できなかった。平成24年度から行っている母体低栄養モデルラットを用いた、トランスポーターの発現や、尿細管・間質病変の検討で検討を更に継続していたが、やはり有意な結果が得られなかったため、DNAメチル化の網羅的検討を行い、指標蛋白の再検討の参考とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、当初の計画では平成25年度に行う予定であった、片側尿管結紮、虚血再灌流負荷による、上記モデルラットにおける経時的変化の観察を行う予定である。計画当初は、ベースラインで対照群と母体低栄養群に有意さが出なくても、虚血再灌流の負荷で反応の大きさに変化が現れる可能性を考えたが、臨床症例のデータで、「新生児仮死」と尿細管機能マーカー、糸球体機能マーカーとの関連が確認できなかったため、長期の観察により、尿細管機能も糸球体機能も回復していくことも予想される。実験手法については、研究申請計画書に記載したとおりである。 また、平成25年度に行ったDNAメチレーション解析で有意差が得られた遺伝子群について、蛋白発現の差をウエスタンブロットや免疫組織染色で解析していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
・平成25年度は、当初虚血再灌流モデルを作成する予定であったが、平成24年度に有意な結果が出なかった実験を繰り越したため、実施できなかった。また母体低栄養ラットモデルにおけるDNAメチル化の網羅的検討を業者に依頼したところ、想定したよりも低価格であった。消耗品の購入が効率良く行え、支出が抑えられた。 ・スケジュールの調整がつかず、米国腎臓病学会に参加できなかった。 ・虚血再灌流モデルを作成する予定であり、その検体を用いての実験の一部を専門業者に依頼する予定であるため、その費用に充てる(1検体が十数万円程度になる予定)。また虚血による腎障害の指標、尿Neutrophil gelatinase-associted lipocalin (NGAL)の測定を専門業者に依頼する予定であり、その費用に充てる(1検体2万円程度になる予定)。 ・円安の影響で国際学会への参加費が引き続きより高額となる可能性がある。
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