研究課題
子宮内劣悪環境による胎児発育遅滞は、成人後の生活習慣病のハイリスク因子であり、その機序の一つとして、糸球体数減少による慢性腎障害が指摘されているが、詳細なメカニズムは未解明である。研究では、ラット母体低栄養(以下NR)モデルを用いて、糸球体形成に関与する遺伝子が受けるメチル化の変化、また出生仔に腎侵襲を与えた場合の変化について検証した。最終的に、機序の解明には至れなかったが、胎仔後腎の尿細管分岐が抑制され、その結果として糸球体形成が減少し、生後も胎仔の腎に負荷がかかると腎機能低下が顕在化するという結果を得た。・後腎形成に関与する遺伝子メチル化の変化の検証:NR(飼料を対照の50%に制限)および対照ラットの胎生18日後腎のDNAメチル化を検討。NRの胎生13-15日の尿管芽分岐は対照に比し50%減少、生後3週の糸球体数は20%減少。15911のプロモーター領域のうち7330領域がNRでのみメチル化されていた。メチル化により転写が制御されている可能性のある遺伝子のGOカテゴリーは頻度の多い順にシグナル伝達、転写、トランスポート、アポトーシス、発生。腎発生に関与する遺伝子のほとんどが尿細管分枝に重要であった。・子宮内劣悪環境により減少したネフロンへの二次的侵襲により影響の検証:NR胎仔を6週齢で片側左尿管結紮した。日齢7での体重、血圧、血清クレアチニン(Cr)、尿(浸透圧、蛋白/Cr、Na/Cr、NAG/Cr、Mg/Cr)に対照との差はBUNのみNRで有意に増加した。病理学的には、対照、NRともに閉塞腎腎盂の拡張を認め、NR閉塞腎には広範な尿細管壊死が認めた。健側腎に対する閉塞腎におけるcollagenの専有面積の増加率は、NR閉塞腎で顕著に増加。CD31の染色性はNRと対照で差はなかった。NR仔ラットは尿管結紮による腎傷害の程度が強く、虚血に対する脆弱性、線維化の亢進が示された。
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